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スタートアップのすゝめ


なぜ日本にはいい投資先がないのか? 理由は2つある。

1つ目は、圧倒的にスタートアップ自体の数が少ないこと。終身雇用制で流動性が低い日本の労働環境のなかでは、失敗する確率の高いスタートアップを起業することに対するリスクがシリコンバレーよりもはるかに大きい。

シリコンバレーのようにスタートアップのエコシステムが発達している場所では、失敗しても受け皿はいくらでもあるし、いい失敗であればそれも起業家としての勲章になるが、日本ではまだそこまでエコシステムが成熟していない。

2つ目は、より大きなグローバルの市場に打って出られるだけの実力があるスタートアップが少ないこと。国内市場がある程度大きいがゆえに、国内だけでもそこそこの規模のビジネスができることから、スタートアップにとっては、とりあえずある程度国内でスケールすればそれなりのエグジットも見えてくる。これがグローバルへと向いていかない理由だ。

それゆえに、日本はまだGDPでは世界第3位の規模があるとはいえ、今後は縮小していく市場であり、海外に展開できないビジネスでは投資の対象として魅力に欠けるのだ。

スタートアップにとってチャンスだらけの日本


シリコンバレーにいると世界中から野心的な起業家が集まってくるので、ある程度グローバルで何が起こっているのかも見えるのだが、やはり日本の存在感は乏しいと言わざるを得ない。アメリカや中国、欧州の先進国だけではなく、新興国でも起きている破壊的イノベーションの動きを見ていると、日本は本当にこのまま取り残されてしまうのではないかと不安になる。

だが、この現状を逆に見れば、日本はスタートアップにとってチャンスだらけの国でもある。スタートアップが少ないということはすなわち競合も少ない。国内市場だけでは未来が描けない既存の企業は、スタートアップとの協業意欲がとても高く、スタートアップにとっても、うまくやれば大企業のリソースを使って効率の良い経営ができる。また日本の投資家は、事業会社が直接的にでも間接的にでも入っている場合が多いので、グローバル展開が見える有望なスタートアップは資金の調達に困ることはないだろう。

特に、こういったチャンスを掴んで欲しいと思うのは、大企業にいて思い通りに新しいアイデアが実現できずに燻っている優秀な人たちだ。大企業にいるがゆえに見えている顧客のペインポイントを、新しい手段で解決できるようなスタートアップであれば、他の人からそれが見えにくいものであればあるほど優位な立場にある。

誰にでも見えるコンシューマー向けの世界は競合も多いが、このようなB2Bの領域では競合が少なく、うまく刺されば一気にその市場を占めてしまうこともできるだろう。大企業というのは組織の性格からそもそも既存のビジネスを最適化すべく設計された組織だ。そのなかで破壊的イノベーションを起こそうというのはそう簡単なことではない。だったら外に出て始めてしまえばいいだけの話だ。

福沢諭吉は「学問のすゝめ」のなかで、学問には個人的と社会的の2種類の目的があり、個人的な目的は生活の独立だが、社会的な目的は業績によって社会の進歩に貢献することであり、それは人間の義務だと説いた。

「学問」はそのまま「スタートアップ」に置き換えられる。福沢諭吉が明治維新の激動の後に日本人の考え方が変わらなければいけないと説いたように、現代のテクノロジーの進化とグローバリゼーションの激動のなかで、日本人の考え方も変わらなければならない。そして本当に社会にインパクトを与えるようなことを成し遂げるにはスタートアップで「破壊的イノベーション」を起こすことがいちばんの近道だと信じている。

文=村瀬功

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