オフはたったの6日間? サッカー界に「働き方改革」が必要な理由

Hiroki Watanabe / Getty Images


いざピッチに立てば、選手たちは必死にプレーする。充分なオフを取れず、その結果としてダメージが蓄積されてきた心身を奮い立たせるほどに、不慮の大けがを負うリスクも高まる。財産である大事な選手たちを守るためにも、勇気をもって立ち止まったと、鈴木ダイレクターは力を込める。

「何年もこういう状況になっていると、どこかに必ずしわ寄せがくるし、実際に昨シーズンもけが人が続出した時期があった。なので、これを踏まえて、『いろいろなこと』を考えていかなければいけない。ちゃんと休養を取って、リフレッシュした状態で再びサッカーをして、クオリティーを高めていく、そういうしっかりとしたサイクルにしていかないといけない」

鈴木ダイレクターが言及した「いろいろなこと」とは、元日に開催される決勝戦を含めた、天皇杯全体のスケジュールにほかならない。冒頭で記したクラブ間で生じるオフの多寡も、天皇杯決勝をJ1リーグの最終節前後へ前倒しすれば、完全ではないにせよ、それでも劇的に改善されることがわかる。

初詣で明治神宮を訪れる参拝客の1パーセントでもいいから、スタンドへ呼べないだろうか──。人気低迷にあえぐ日本サッカー界を盛り上げるための起爆剤として、歴史ある天皇杯の決勝戦を旧国立競技場で、しかも元日に初めて開催したのは1968年度の第48回大会だった。

集客面だけでなく興行面でも狙いは的中し、天皇杯決勝は元日の風物詩として定着した。しかし、半世紀以上の時間が経過したなかでJリーグが産声をあげ、当時には存在しなかったACLやFIFAクラブワールドカップなどの国際大会も創設された。もはや天皇杯決勝の元旦開催は時代にそぐわなくなった感は拭えない。

今回はACLプレーオフが1月中に開催されたがゆえの例外だという声もなかにはある。それでもアントラーズに限らず、元日に天皇杯の決勝が開催される限りはシーズンオフの期間で必ずチームによって多寡が生じ、不公平感を生む源になる。働き方改革が叫ばれる状況の前に、伝統の二文字が立ちはだかる形となっている。

2020年度大会もすでに、天皇杯の決勝戦の元日開催が決まっている。しかし、天皇杯の日程変更を検討するうえで障壁となってきたFIFAクラブワールドカップも、毎年12月中旬に開催される現状の方式から、2021年には夏場に、しかも4年に一度の開催となることがすでに決まっている。

つまり、すべてのJリーガーがほぼ同時にオフへ入れるスケジュールが、2021シーズンから可能になるのだ。天皇杯決勝戦の元日決戦を実現させた先人たちの叡智への敬意も理解できるが、天皇杯を主催する日本サッカー協会とJリーグには、いまこそプレイヤーズファーストの視点に立って、試合スケジュールを考え直す姿勢が求められる。

連載:THE TRUTH
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文=藤江直人

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