「男と女II」は、ジャン・ルイとアンヌが、自分たちが20年前に出会った思い出の地、ノルマンディーのドーヴィルで互いの絆を確かめ合うところでエンドマークとなるのだが、今回の「男と女 人生最良の日々」では、またもや2人は、結ばれることなく離れ離れに暮らしている。
なぜ2人が別れを繰り返したのか、ルルーシュ監督は、両作品のなかで詳しくは明らかにしていないが、最初の「男と女」から観ている人間としては、この展開は歓迎していいのか、落胆していいのか、やや途惑うものがあった。
「男と女」の続編に関しては、1988年の前回も、そして今回も、賛否両論かまびすしいものがあったが、まさか半世紀を経て、こうして同じキャスト、同じ配役、同じ監督で、ひと続きの物語として描かれることになったことを考えれば、これはこれでよかったのかもしれない。
当時の子役もすでに60歳を過ぎて
「男と女 人生最良の日々」には、もちろん、過去の「男と女」の映像も頻繁に使われている。とくにモンテカルロラリーで優勝したジャン・ルイが、南フランスのモナコから、パリを経由して、徹夜でレースカーのハンドルを握り、アンヌが待つノルマンディーのドーヴィルの海岸に姿を現す場面は、この52年後の「完結編」でも感動的にインサートされている。
今回、あらためて「男と女」も観直したが(おそらく10回目くらい)、ドーヴィルの海岸でジャン・ルイが自分の到着を知らせるためライトの点灯を繰り返すシーン他、映像的に秀逸なシーンが多数散りばめられている。セリフで表わせば陳腐になってしまう場面も、若き日のルルーシュ監督は、車の動きやカメラワークで実に巧みに表現しようとしている。
また、「男と女」はモノクロとカラーの両方のフィルムで撮られており(当時、お金に困っていた監督が値段の高いカラーフィルムが買えなかったとも言われている)、その各々の部分が実に効果的に使い分けられている。「男と女II」までもとは言わないが、この1966年の「男と女」は観ても損はないと思う。
日本でも先頃、「男はつらいよ お帰り 寅さん」で、渥美清が演じる寅さんのかつての映像が印象深く使われていたが、「男と女 人生最良の日々」では、過去の映像にプラスして、実際に演技をした俳優と女優が、そのままの役柄で現在の場面にも登場する。しかも50年以上も経てだ。
ちなみに「男と女 人生最良の日々」では、ジャン・ルイの息子のアントワーヌとアンヌの娘のフランソワーズも、半世紀前の「男と女」の子役が演じている。当時、10歳にも満たなかった2人の子役も、いまは2人とも60歳を超えており、如何にこの作品が特別なものかもわかる。
クロード・ルルーシュ監督(C)Kazuko Wakayama
当のルルーシュ監督もすでに82歳。さまざまな条件をクリアしなければ、このような「奇跡」は今後も起こらないような気もする。それだけでも、この作品は観る価値があるのかもしれない。
連載:シネマ未来鏡
過去記事はこちら>>