「男と女 人生最良の日々」は、1966年にクロード・ルルーシュが監督して、カンヌ国際映画祭の最高賞やアカデミー賞の最優秀外国語映画賞を受賞、いまも恋愛映画の名作として語られる「男と女」の52年後(製作年による)を描いた作品だ。
「奇跡」を演じたのは、1966年の「男と女」で主役を演じたジャン=ルイ・トランティニャンとアヌーク・エーメ。当時36歳と34歳だった2人は、本作では、88歳と86歳となる。
作品のなかでの年齢設定は定かではないが、「男と女 人生最良の日々」では、おそらく80歳代の「後期高齢者」(こういう呼び方はムードぶち壊しだが)が、不幸にも成就することのなかった恋愛を「追体験」するという内容だ。
2度別れたジャン・ルイとアンヌ
かつてはレーシングドライバーとして名を馳せ、モンテカルロラリーでも優勝したジャン・ルイ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は、いまは海辺の療養施設で余生を送っていた。過去の記憶が徐々に薄れていくなかで、彼は人生の終幕を迎えようとしている。
そんな父親を案じた息子のアントワーヌは、彼が深く愛しながらも結ばれることのなかった女性アンヌ(アヌーク・エーメ)を探し出し、いまも彼女のことを忘れずにいるジャン・ルイに会って欲しいと懇願する。
田舎の町で娘フランソワーズと小さな店を開いているアンヌは、アントワーヌの申し出に即答を避けるが、後日、彼女は自ら車のハンドルを握り、ジャン・ルイのいる施設を訪れる。彼の前に姿を見せたアンヌだったが、ジャン・ルイは相手が彼女だと気づかぬまま、自分が昔愛した女性の思い出を語り出すのだった……。
実は、ジャン・ルイとアンヌは、2度、別れたことになっている。1度目は1966年の「男と女」の後。映画は、紆余曲折を経て、2人がパリのサン=ラザール駅で劇的な再会を果たすところで終わるのだが、結局、2人は結ばれることはなかった。
そのことは、その20年後に、また同じ監督、同じキャストでつくられ公開された「男と女II」で明らかにされる。この作品ではジャン・ルイはあいかわらずレーシングドライバーをやっており、息子の年齢ほどの若い恋人と暮らしている。
一方、アンヌは「男と女」では映画のスクリプターだったが、「男と女II」では大作映画を仕切る女性プロデューサーとなっており、自分たちのかつてのドラマチックな恋愛をそのまま映画化しようと、20年ぶりにジャン・ルイに再会する。つまり、20年前のサン=ラザール駅の2人は、結局その後別れてしまっていたのだ。