自分らしいチョコレートは、手作りにこだわって
フィリップ・ベル氏
リヨンからのもう1店は、手作りにこだわったチョコレート作りで知られる「フィリップ・ベル」。ショコラティエのベル氏は、「チョコレートの流行? むしろそれに流されないのが自分のスタイル。みんなが赤い着色料を使っているからと言って、自分は使わないです。人工的な添加物はなるべく加えないで作りたいから」と話す。
手作りの良さは、「全部自分の思うようにできるところ」だという。特にシグニチャーのオレンジコンフィについてのこだわりはひとしおだ。
「もちろん、チョコレートに綺麗に線を引くのは、機械がやったほうが均一にできるからその方がいいでしょう。でも、オレンジのコンフィ作りは絶対に手作業でなくては。私も含め、全員でオレンジの皮を剥いて作業をしているよ。プラリネだって、既製品を使った方が安くて楽。でもアーモンドを買う所からスタートすれば、好みの味にできて、自分らしく仕上がるでしょう? こういった手仕事の良さは、次世代にも伝えていきたいですね」
ベル氏の厨房の様子(本人提供)
今年3月には念願の豆の焙煎機を導入し、エクアドル、ベネズエラ、コロンビア、ペルー、サオトメ(ギニア)、マダガスカル、コートジボワールから仕入れた豆で、より自分らしいチョコレートづくりに取り組む予定だという。
意外性溢れる和の味 アイデアは和食の厨房から
市川幸雄氏
帝国ホテルのペストリーシェフ、市川幸雄氏は、ホテル全体のデザートを監修するという経験を活かしたユニークなチョコレートを発売していた。和食「なだ万」の厨房で思いつき、去年11月に作った新作のチョコレート「鰹&梅干し」だ。
温めたクリームと牛乳に大量の鰹節をさっと入れて引き上げて一番出汁をとり、ガナッシュにするというアイデア。鰹のほのかな苦味と生臭さを取るために、熟した南高梅といちごのピュレでジャムを作り、食感のアクセントにカリカリ梅を入れて仕上げた。
「酸っぱくてしょっぱい、ご飯にも合うチョコレート。基本的に、ご飯に合うものはチョコレートにも合うんじゃないか、と思っています」と市川氏。
大量生産するわけではないので、テンパリングもコーティングも手作業で行う。だからこそ、フィリングに合わせて異なったチョコレートを選び、コーティングの厚みも変えることができる。そんな細やかな手仕事と配慮は、端正なデコレーションからも見てとることができた。