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2020.02.06 11:30

「未来を編む」3Dニット靴 世界の注目スタートアップ──ロシーズ


共同創業者のマーティンとホーソーンスウェイトはそれぞれの妻を通じて知り合い、親しくなった。マーティンの妻、エミリーと、ホーソーンスウェイトの妻、エリンは10年以上前に子育てサークルで出会い、一緒にマラソンやトライアスロンのトレーニングするようになり、家族ぐるみで付き合うようになった(マーティン夫妻には4人、ホーソーンスウェイト夫妻には2人の子どもがいる)。

2012年、ギャラリーのオーナーであったマーティンは金持ちの我がままなアート収集家たちとの付き合いに嫌気がさしており、GCAやバークレイズといった世界的投資銀行でキャリアを積んでいたホーソーンウェイトは起業の機会を窺っていた。マーティンによれば、当時、サンフランシスコでは黒いヨガパンツをはいて街を闊歩する女性達が増えていた。だが、そうしたスタイルに合う靴を履いている女性は少なかった。

「妻は素敵なバレーシューズを買っても、次のシーズンにはもうくたびれてしまい、結局、いつもランニングシューズを履いていました」

靴に関して、マーティンとホーソーンウェイトは共に素人であったが、もっと良い靴をつくることができるのではないかと考えた。

2人は13年に中国を旅行し、ニットシューズのアイデアを思いついた。当時、繊維を編み込んで靴を作るという概念は画期的なものであった。さらに、従来の靴に比べて製造工程で出る廃棄物を減らすことも可能であり、繊維自体もリサイクルしたペットボトルを殺菌消毒後、再生させたプラスティックからつくられる。

18年、ロシーズは100万足以上の靴を販売し、19年には200万足近くを販売する見込みだ。中国の工場は現在、6フロアに140台のニットマシンが設置され、約500人の従業員が働いている。

忘れてならないのは、ライバル企業もロシーズに対する熱狂的な支持を察知していることである。

マーティンはより長期的な観点から、サステナビリティというロシーズの基本的価値観に根ざした新たな商品を模索している。それがどういった商品になるか、具体的に説明してくれることはなかったが、エバーレーンが販売する98ドルのニットフラットシューズなど、ロシーズの商品にそっくりの後発商品も増えているため、ロシーズにとっては競争相手の数歩先をいき続けることが鍵になる。だが、彼が今見据えているのははるか遠い先である。

「イノベーション。これこそ究極の切り札です」


ロス・マーティン◎女性用シューズのeコマース、ロシーズのCEO。長年の友人であり、共同創業者のスティーブ・ホーソーンウェイトが健康問題で退社し暫定CEOに。推定時価総額は7億ドル。2018年には100万足を売り上げ、19年には約200万足を見込む。近くワシントンDC、NYなど数都市で店舗をオープンさせ、中国にも進出予定。

文=エイミー・フェルドマン 写真=ティム・パネル 翻訳=松永宏昭

この記事は 「Forbes JAPAN 1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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