チャンスは女性、特に30代までの女性の足元に転がっていた。再生樹脂を立体的に編み込んだ3Dニットシューズの製造販売で、急速に成長しているスタートアップ企業、ロシーズ(Rothy’s)は、ソーシャルメディアを活用した低コストのメディア・マーケティングと口コミをバネに、ほぼゼロだった売上高がこの3年間で1.4億ドルに膨れ上がる驚異的な成長を遂げた。
イギリスのメーガン妃もロシーズのファンであり、妊娠中、ロシーズの黒いポイントトゥ・フラットシューズ(定価145ドル)を履いている姿がSNSに投稿されている。
ロシーズ成功の背景には、購買動向の変化だけでなく、女性が靴に求めるものが変化していることがある。マーケティング調査会社であるNPDグループによると、米国の靴市場は720億ドル規模の巨大市場であり、そのうちレディスが340億ドルを占めている。歩きにくいハイヒールが支持されなくなり、履き心地の良さとサステナビリティ、つまり地球環境への優しさが重視されるようになっている。フィルモア・ストリートにあるロシーズの小型店舗の外には熱狂的な顧客が行列を作り、「ロシーズ中毒」と名乗るフェイスブック上のグループには14000人近くが参加している。
「私たちは女性に愛される商品を世に送り出しています」。46歳の共同創業者でCEOのロス・マーティンはそう語る。
投資家もロシーズに熱い視線を送っている。直近の資金調達ラウンド後、ロシーズの推定時価総額は7億ドルに達しているが、リードインベスターであるライトスピード・ベンチャー・パートナーズとゴールドマン・サックスを含め、投資家がこれまでにロシーズに出資した金額は4200万ドルに過ぎず、現在もマーティンとホーソーンウェイトがロシーズの株式の大半を握っている。
フォーブスの推計によると、この2人の創業者が保有する株式の時価総額は5億ドル近くに達している。外部資本の受け入れを最小限に留めることは当初からの計画通りであった。「大金を手にすれば、顧客獲得のために多額の資金を投じたり、ばかげた判断を下したりするかもしれません」とマーティンは言う。