2018年、息子であるアントワーヌ・アルノーがコミュニケーション領域のトップに就任し、SNSの運用を含めたメディア対応にあたることになった。LVMHの取締役を務め、将来の後継者とも目されるアントワーヌの素顔を探る。
LVMHを率いるベルナール・アルノー
1949年にフランスで生まれたベルナール。現在は、「ルイ・ヴィトン」や「クリスチャン・ディオール」、「ティファニー」など一流ブランドを傘下に収めるLVMHを率いている。
81年に社会党政権を樹立したミッテラン大統領の政策を嫌い、82年にはアメリカへ移住したこともある。帰国後の84年、「クリスチャン・ディオール」を所有するフランスの繊維会社「ブサック」を買収したことを皮切りに買収を繰り返し、ブランド帝国を築いていく。
ベルナールは、ビル・ゲイツやジェフ・ベゾス、ウォーレン・バフェットなどと世界長者番付で、常に上位を争っている。1000億ドルを超える資産の中心は、LVMHの株。ビジネスの好調さを裏付けるように、年々資産を増やすことに成功している。
また、フランス国家への貢献を認められ、レジオン・ドヌール勲章や芸術文化勲章を叙勲するなど社会的にも評価をされている。
アルノー家の長男、アントワーヌとその家族
ベルナールには、4人の息子と1人の娘がいる。長男のアントワーヌは77年、フランス生まれ。アントワーヌの妻はモデルのナタリア・ヴォディアノヴァ。ナタリアは82年、ロシア生まれで、10代のうちにパリでトップモデルの仲間入りを果たしている。
アントワーヌとナタリアの間に生まれた子ども2人と、ナタリアが前夫との間にもうけた子ども3人の7人でパリで暮らしている。08年にルイ・ヴィトンのキャンペーン撮影で出会ったふたりはしばらく友人関係であったが、ナタリアの離婚などをきっかけに距離を縮めていったという。
アントワーヌは、ベルナールの後継者としても注目されている。しかし、あくまでも後継候補だ。アントワーヌの姉、デルフィーヌ・アルノーは、「マッキンゼー」のコンサルタントとして働き、00年に「ジョン・ガリアーノ」へ転職。同社の成長に貢献した。
01年には「クリスチャン・ディオールクチュール」の執行委員会に参画し、13年からルイ・ヴィトンのエグゼクティブ・バイスプレジデントに就任するなど活躍を続け、LVMHの取締役会および執行委員会のメンバーになっている。
ベルナールの他の3人の息子もLVMH傘下のブランドで活躍中だ。次男のアレクサンドル・アルノーは「リモワ」CEO、三男のフレデリック・アルノーは「タグ・ホイヤー」に在籍。1番下の息子のジャン・アルノーはLVMHでインターンを行っているという。
アントワーヌの仕事ぶり
アントワーヌはフランスのビジネススクール、INSEADを卒業し、23歳でインターネットのドメイン名保護とリサーチを行うベンチャー企業を立ち上げた。その後、LVMH入りし、傘下の「ベルルッティ」と「ロロ・ピアーナ」のトップ、そしてLVMHの取締役、イメージ・コミュニケーション責任者として順調にキャリアを重ねている。
LVMHは19年、環境とサステナビリティに関する新しい指針を発表した。指針には動物を使った素材についての規定や、アマゾンの森林火災への支援、ユネスコとのパートナーシップなどが盛り込まれている。また、LVMHの店舗における消費エネルギーの削減などにも取り組むと掲げている。これらのプロジェクトの中心となったのがアントワーヌだ。
また、彼は「ステラ・マッカートニー」とのパートナーシップ契約、LVMH傘下のブランド施設やアトリエを一般公開する「レ ジュルネ パルティキュリエール」の取り組みの中心となった人物。
まだまだ衰えを見せないベルナールについて、アントワーヌは「引退は想像がつかない」と語っているが、LVMHで着実にキャリアを積み重ね、40代になった彼の動向には世界中から注目が集まっている。