アルマーニがバーキャビネットに込めた「日本文化への憧れ」

キャビネットに使われるラッカー(塗装)前の水彩画が施された板。

ある経営者は大切な判断をするときに、お気に入りの絵の前に立つという。心の動かし方は人ぞれぞれであるが、日常にアートがあるというのは、有効なひとつの方法であるだろう。

絵を飾るのにスペースが限られる日本の住宅事情では、アートと家具を兼ね備えた商品はひとつの選択肢となる。今回、ジョルジオ アルマーニのインテリアホームコレクション「アルマーニ/カーザ」が、卓越した職人技を堪能できるイベントを開催した。「アルマーニ/カーザ」が提案するアートとしての家具の価値とは?


イタリアのファッション界の巨匠、ジョルジオ アルマーニが手がけるホームインテリアコレクション「アルマーニ/カーザ」。

アルマーニ氏の追求する美意識を、最高品質の素材で作り上げているコレクションとして、2000年の誕生以来、そのミニマルで美しい表現が注目を集めてきた。


「ゴールデンリーフ」という技術を使い、金箔を手作業で貼り付けた机。

「アルマーニ/カーザ」は現在60社の工房と提携しながら、手作業による洗練された美しさを追求し続けている。今回、「アルマーニ/カーザ」の「アルチザン イベント」では制作に携わる4人の熟練の家具職人が来日し、その技術を披露した。

実演されたのは、麦藁を1本づつ裂いて意匠を施す「ブラックストロー」、特殊な糊で金箔を均等に貼り付けていく「ゴールデンリーフ」、水彩で手書きした作品をラッカー塗装で仕上げる「オーシャンラッカー」の3つだ。


黒の麦藁を裂いて放射状の意匠を凝らした「ブラックストロー」


金箔を用いた高級感ある仕上げの「ゴールデンリーフ」

ファッションから始まったブランドらしく素材の使い方に定評があるアルマーニは、家具もその質感に特徴がある。麦藁の意匠は内部に光を閉じ込めたように輝き、金箔も見る角度により、美しく光を反射する。表面の加工には機械は使用せず、2週間以上かけて手作業で行われる。家具という実用的なアイテムでありながら、もはやアートピースと呼べる価値を感じるものだ。

特に印象的なのは、バーキャビネットの引き出しの扉に使われる「オーシャンラッカー」の作品だ。青と白が繊細に混じり合い、黄色が差し色に添えられたこの図柄から連想できるものはないだろうか?これは、江戸時代後期の浮世絵師・葛飾北斎による「冨嶽三十六景」に影響を受けたという図柄だ。眺めていると白波と青い海、背景に使われたベージュの空の色に見えてくる。
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文=児島麻理子

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