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会場を埋め尽くす CancerX の参加者たち

2月4日は「ワールドキャンサーデー(世界対がんデー)」だ。がんとがん患者、その周りの人々だけでなく、私たち一人ひとりがこの1日をフックとして、あらためて、がんについて考える日。

がんに対しては病名こそ当たり前のように知られているものの、決して理解が進んでいるという状況ではない。メディアからの玉石混交な情報群、当事者たちとの距離感、支援者たちの活動の様子、そしてがんそのものの知識。あまりに知られていないことが多いのが、がんだ。

たとえばこの問いに答えられるだろうか。

国民の◯人に1人はがんになり(罹患率)、□人に1人はがんで亡くなる(死亡率)*

正解は罹患率が「2人に1人」、死亡率が「3人に1人」だ。知っていてもおかしくはないほど“身近な話”だが、調査を行った一般社団法人CancerX によると、罹患率の認知は全体の33.6%、死亡率は全体の21.2%、そしていずれも解答できた人はたったの8.2%だったという。当然、近似値の回答はあったはずだが、CancerX によると罹患率を10人に1人と回答するなどかけ離れた回答もあったという。これが現在のがん認知に対する私たちの一面でもある。
( * ) 国立がん研究センター がん情報サービス 最新がん統計による

ワールドキャンサーデーというきっかけは、がんについて知る扉でもある。この日に先んじ、上述した一般社団法人CancerX は2月2日、都内イベントスペースで「CancerX summit 2020」を開催し、50名を超える専門家、500人にも及ぶ参加者が集まった。

2019年に本格始動したCancerX は、強力なコレクティブインパクトによって、がんと取り巻く環境にイノベーションを起こすことを目指している。発起人には、海外のがん事情に詳しく、自らもがんサバイバーである腫瘍内科の権威、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの上野直人教授や、京都大学 iPS 細胞研究所で免疫・血液学などの知見が深い医薬学博士 三嶋雄太も名を連ねるほか、メディア視点、プロデューサー視点を持つ電通の半澤絵里奈など、バラエティに富む。

2020年のテーマは「がんと言われても動揺しない社会に向かって」とし、丸1日を通して、6つの大きなセッションと、7つの分科会という構成で行われた。それぞれのセッションには個別のテーマが掲げられ、その分野の代表的なスピーカーが招かれた。

AYA(アヤ)世代のがんへの向き合い方に聞き入ってしまう


AYA世代という言葉をこの機に覚えておいて欲しい。知られていないがんの実情として冒頭に認知の数値を紹介したが、AYA世代という単語については、がんに関わる者以外、そう多くは知られていない言葉だろう。

Adolescent and Young Adult。略してAYAだ。思春期・若年成人として、15歳から39歳の患者がその世代と言われる。がんは、そもそも世代によって発症するがんの種類が違い、大まかには「小児がん」と「成人がん」に大別されていたが、その両方の発症が考えられる世代だ。加えて、進学、仕事、結婚など、人生の節目がいくつも訪れる期間であり、精神的にも、肉体的にも多くの事象が待ち構える世代。

AYA世代のスピーカー6名を招き行われたセッション「セッションⅣ:若いがん経験者たちのチャレンジ」は、胸に響く言葉で展開された。

モデレーターは自らがんサバイバーであるREADY FORの若きCEO米良はるか。「宣告された時のあまりに強いストレス。適応障害も発症し、当たり前の明日がなぜこないのかと思い悩んだ」と切り出す。

「ただ今日のセッションでみなさんが何か一歩踏み出す気持ちになれたら」と聴衆に投げかける。

当事者だからこそ語れる、考えさせられる言葉のチョイスに引き込まれる。参加した観客全員が同じように感じただろう。米良の投げかけから始まったディスカッションでは、同様にがんを抱えながらも、様々な活動を精力的に行う言葉が交差していく。

CancerX のセッションに登壇したAYA世代たち
セッション AYA世代 若いがん患者たちのチャレンジ登壇者: 左からモデレーター:米良はるか|READYFOR 株式会社 代表取締役CEO/スピーカー:岸田徹|NPO法人がんノート 代表理事/中島ナオ|NPO法人 deleteC 代表/谷島雄一郎|大阪ガス株式会社・カラクリlab.代表/樋口麻衣子|富山大学附属病院看護師 がん看護専門看護師/西口洋平|厚生労働省がん対策推進協議会 委員

例えば、NPO法人がんノート代表理事岸田は「あるがん患者のブログに書かれていた発症から立ち直っていく日々。この情報に触れた時に自分が変わることができた」と言う。これは自らが、YouTubeで患者との対話を配信する事業の根元にもなった。

大阪ガスの社員でありながら、カラクリlab.を運営する谷島も、「理不尽に対する悔しさはあった」と言う。罹患と同時に子どもが生まれた谷島。「娘が3歳の時にデジカメが欲しいと言ってきた。生意気に!(笑)と思いつつも買い与えた。良い写真撮る天才なんですよ」会場の笑いを誘いながらも、「その写真を見ながら思ったんです。3歳の目線の景色だねと。僕もがんになったからこそ見える景色がある。その景色を伝えることで誰かの力になる」と。未来へ続く何かを残すのが自分への救いになるとして精力的に活動する。

6人のうちの多くはステージ4で、それぞれの悩みを持ちながらも自身の活動を続ける。そのパワーの源は何なのか。共通して言えるのは、精神的な強さという話ではなく、一瞬、光を失いながらもそれぞれが自分の価値を最大化しようとしたことなのかもしれない。

この事実を知ることこそ、CancerX に参加した意味だと感じた。受け身として情報を得るだけの日々ではなく、わたし自身の能動が、がんをさらに広く知ることになったのだ。

CancerX に関しては、さらに詳しいレポートを記載する予定だ。

文=坂元耕二

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