米民主党予備選、注目すべき化石燃料をめぐる候補者の姿勢

民主党のバーニー・サンダース上院議員(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

2020年アメリカ大統領選挙で戦う民主党の指名候補者を決める予備選挙が目前に迫った。2月はじめのアイオワ州を皮切りに、ニューハンプシャー州、ネバダ州、サウスカロライナ州で党員集会と投票が行われたあと、候補者たちはようやくその4州の外へと向かうことになる。

それは、候補者たちの主張が変わる可能性があることを意味する。アメリカ人のなかには、異なる関心事や優先事項をもつ人たちがいるからだ。

候補者たちはこれまで、エネルギーと環境問題をめぐって強硬な政策を訴えてきた。しかし、化石燃料資源によって繁栄してきた州で選挙活動を繰り広げる際、そうした主張を引き続き口にするだろうか。それとも、化石燃料を糾弾する論調を和らげるのだろうか。私たちは推測するしかない。

ニューヨーク・タイムズ紙は、懸念を抱くペンシルベニア州の民主党員たちについて報じた。民主党の候補者たちは、石油・天然ガス生産におけるフラッキング(シェールオイルやシェールガスを生産するための水圧破砕による坑井掘削)の禁止を訴えているが、こうした主張は党にとって不利になるのではないかと心配しているのだ。

アメリカ人は誰でも、候補者の声明や政策の内容を入手できる。それは、選挙活動が行われている州を問わない。しかし、大統領選の指名争いを繰り広げる民主党の候補者たちが、化石燃料を生産する州に足を踏み入れる際には、彼らの環境保護主義がグラつくかどうかチェックする必要がある。

有権者の利益に反する政策を、特に面と向かって訴えるのは、政治家にとってはまずい戦略だ。元国務長官のヒラリー・クリントンは、2017年に出版された自叙伝のなかで次のように告白している。2016年大統領選における最大の過ちは、オハイオ州コロンバスの集会で、自分は「多くの炭鉱労働者を失業させ、石炭会社を倒産させることになるだろう」と発言したことだった、と。

それはまずい。オハイオ州といえば、ジョン・D・ロックフェラーが1870年に石油会社を創業した地であるとともに、現在も炭鉱が操業中で、フラッキング業界が成長している州なのだ。クリントンは大統領選本選において、化石燃料を生産する主要な州のほぼすべてで敗北した。唯一の例外はコロラド州だ。勝つことが何よりも重要だったのであれば、その発言はおそらく最大の過ちだったと言える。

エネルギー問題について言えば、前副大統領ジョー・バイデンが有利かもしれない。記録によればバイデンは、連邦政府保有地での採掘はやめさせると発言している。つまり、連邦政府の土地では、新たに油田や天然ガスの採掘をしないということだ。

とはいえ、スウィングステート(選挙の度に共和・民主の勝利政党が入れ替わる激戦州)であり、フラッキング産業も盛んなペンシルベニア州とオハイオ州には、連邦政府が保有する土地はごくわずかしかない。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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