新型肺炎と戦う「医療ロボット」、米中のテック企業が開発

Photo by Kevin Frayer/Getty Images

米国で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認された、ワシントン州の病院では「Vici」と呼ばれる医療ロボットが活用されている。Viciは可動式の台車の上にタブレットを搭載した遠隔医療デバイスで、医師が患者とダイレクトに接触することを避けつつ、基本的な診断を行い、スクリーンから指示を行うことが可能だ。

これと類似したデバイスは、中国や米国の各地の空港やホテルにも導入されようとしている。

ワシントン州のプロビデンス地域医療センターのAmy Compton-Phillips博士は「患者と接触することを避けつつ、適切なケアを提供するためのテクノロジーは非常に重要だ」と話す。同医療センターが導入したViciは、カリフォルニア州サンタバーバラ本拠のInTouch Healthが開発したデバイスだ。

2003年のSARSの感染拡大の際には、多くの医療スタッフが感染し、病院関係者の安全を維持しつつ適切なケアを行う技術の重要性に関心が高まった。中国の国民健康委員会や、米国の疾病対策予防センター(CDC)も、医療スタッフの感染防止は重要な課題だと述べている。

「患者とダイレクトに触れ合う病院のスタッフの数をなるべく減らすことが必要だ」と、語るのは、自律制御で病院の廊下を走り、医療機器を運搬するロボットのTUGを開発した、Aethon社の取締役のPeter Seiffだ。ピッツバーグ本拠の同社は病院向けにこのロボットを提供している。

Aethonは、同社のロボットが新型コロナウイルスの検査を実施中の病院で利用されているかどうかについては回答を避けたが、TUGは既に140カ所以上の医療施設に導入済みという。

中国の新華社通信の報道によると、中国の一部のホテルではLittle Peanutと呼ばれるロボットが、廊下を走行し、隔離された人々に食事を届けている。また、中国南部の病院では、院内のゴミや使用済みのシーツを回収するためのロボットを導入したという。

病院内のデリバリーや遠隔診療以外の分野でも、ロボットは重要な役割を果たす。テキサス州サンアントニオ本拠のXenex社は、遠隔操作で病原体にキセノン紫外線UV-Cを照射して、室内を殺菌するロボットを開発した。

LA国際空港では殺菌マシンを導入


同社の広報担当のMelinda Hartは「各地の医療関係者から問い合わせが相次いでいる。米国だけでなく、中国の政府関係者からも当社のロボットを輸入したいとの連絡が来た」と話した。

Xenex社の殺菌ロボットの価格は1台が約10万ドルとされている。このデバイスの有用性は、既に米国のいくつかの病院の実証実験でも証明済みだ。

一方で、移動式の殺菌デバイスGermFalconを開発したロサンゼルス本拠のDimery社は、1台10万ドルの製品をロサンゼルス国際空港に無料で提供した。

DimeryのプレジデントのElliot M. Kreitenbergによると、同社の殺菌マシンはここ数日、中国からLAに到着した航空機の機内の殺菌に用いられているという。「当社のマシンは狭い機内を効率的に消毒することが可能で、強力な紫外線を照射して細菌を死滅させる」とKreitenbergは話した。

2003年のSARS発生時には存在しなかったテクノロジーが、新型コロナウイルスの拡散防止に役立てられようとしている。

編集=上田裕資

タグ:

連載

新型コロナウイルス特集

ForbesBrandVoice

人気記事