実験室の時間枠内だけでなく、リアルタイムでもウイルスを排除できるとして最も有名な食べ物はおそらくチキンスープだ。風邪やせきを治すためチキンスープを飲んで育った人はおそらく、その中身が実験室で分析されているなど考えもしないだろう。
しかし、米ネブラスカ州オマハのネブラスカ医療センターのグループは20年ほど前、チキンスープを実験室で分析した。その結果、スープの材料である野菜や鶏肉は、感染症にかかっているときに活性化し増殖する白血球の一種、好中球の活動を抑制していることが分かった。この種の細胞が抑制されることで、呼吸器疾患と関係する炎症が緩和される可能性がある。
さらに興味深いことに、ブランドによって好中球への影響に大きな違いがあった。一部のブランドはただの水道水と同じくらいの効果しかなかったが、他のブランドは好中球の数をほぼ100分の1に減らすことができた。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)マテル児童病院の小児感染症学教授で、同校デービッド・ゲフィン医科大学院の分子・医学薬理学教授でもあるポール・クログスタッド博士は、これまでのキャリアを通して抗生物質の乱用を目にしてきた。彼は、試験管を使ったこうした研究の多くを興味深いものと考えている。
クログスタッドは、クルクミンやニンニクの細菌への作用を含め、好中球の活性や細菌増殖の抑制などに効果を発揮する食材は実際多く存在するかもしれないと述べている。
「しかし自分がマラリアに感染した場合、私は世界保健機関(WHO)の助言に従い薬を服用する」とクログスタッドは述べた。私たちは現在、抗生物質が効かない感染症の悪影響に苦しんでいる。しかしクログスタッドによると、抗生物質にはそれでもまだ意味がある。ただし、それがどうしても必要とされているときだけだ。
「私は必要でないときには抗菌剤を使わず、病気に対して慎重に選んだものを使うようにしている。スープは健康的な食べ物で、悪影響はもたらし得ない」(クログスタッド)
さまざまな病に効く、あるいは少なくとも何かを治すことができると主張されている食品は非常に多く、これまでの調査の大半は小規模なもので、そのうち多くは食品製造業者自体の支援を受けたものだ。より大規模な調査は人体内ではなく、実験室レベルで行われてきた。
こうして消費される食材の多くには真の利点が存在する可能性が確かにあるが、今のところは試験済みのものを使うようにし、スープは健康的なおまけとして考えよう。感染症の専門家によると、食べておいて損はないのだ。