ビジネス

2020.02.03

D2Cブランドの「オフライン展開」を簡単に 大阪発スタートアップが作る仕組み

スペースエンジン代表取締役の野⼝寛⼠


アメリカで感じたD2Cスタートアップの勢い


スペースエンジンの創業は2018年5月の創業。野口は学生時代に大阪で起業し、事業譲渡した経験を持つ人物。スペースエンジンは彼にとって、2社目の起業となる。

「2013年頃、U-NOTEやtrippieceなど学生起業家が注目を集めていて、自分も彼らに憧れて『起業したい』と思ったんです。そして2013年に大阪で起業し、当時は若気の至りからか『東京ではなくアメリカに進出したい』と思い、マウンテンビューに拠点を開設しました。最終的に最初に立ち上げた会社は他の会社に事業譲渡し、ビザの都合で帰国することになりました」

帰国後、次の事業アイデアを模索しているときに、野口の頭に印象強く残ったいたのはアメリカで感じたD2Cスタートアップの勢いだった。

「アメリカにいたとき、たくさんのD2Cスタートアップが生まれていて、その多くはオンライン発のブランドとは思えないほど実店舗を展開していたんです。

なぜ、実店舗を展開するのか。気になって調べてみたところ、Shopifyなどのツールによって誰もがブランドを立ち上げ、オンラインで商品を販売できるようになったことで、オンラインでの競争が激化し、いかに広告を出稿できるかの勝負になっていたんです。そのため、いま成功しているD2Cスタートアップはオンラインのみならず、他ブランドと差別化を図るためにブランドの世界観を伝えるためのリアル店舗を展開し始めた。

日本でもポップアップストアを出店するための場所貸しサービスがありますが、それでも場所代だけで数十万かかってしまう。すべてのブランドができるわけではないので、それならばブランドを立ち上げた人がすぐにオフライン展開できるようなサービスがあれば、きっと使ってくれる人はいるのではないかと思い、SpaceEngineに行き着きました」

今後はサプライヤーと店舗のミスマッチも解消


こうした思いから、2019年5月にSpaceEngineをスタート。メーカー・ブランドと実店舗の間に新しい繋がりをつくることで、『すべてのひとに⾃由なリテールを』という会社のミッション実現を目指している。

「過去に自分たちでもリアル店舗を展開した経験があるのですが、とにかくお金がかかって仕方なかった。ポップアップでも出店料や人件費などを併せると数百万円かかりますし、什器の保管などの問題もある。またお店を構える場合は施工、前金、預かり金など多額の費用がかかる。そういったオフライン展開する際に生じるハードルをなくしたい、と思ったんです」

最近になり、スペースエンジンは創業時から拠点としていた⼤阪に加えて、東京本社も開設した。今後もサプライヤー・店舗の双方の拡大に加え、従来のサプライヤーから店舗へ販売依頼を出す機能だけでなく、店舗からもサプライヤーの商品を仕⼊れられる卸売マッチング機能を今年春頃にリリースする予定だという。

「ユーザーの急増に伴い、サプライヤーと店舗のミスマッチも発生しています。例えば人気の店舗は月に300件ほど申し込みがありますが、店舗側は欲している商品がなかったり、地方の店舗は月の申込みが1〜2件しかなかったり、土地や店舗の知名度によって差があるんです。そうしたミスマッチを解消すべく、店舗側から検索して申し込めるようにします。

他にも、2回目以降はオンラインで購入してほしいといった要望もあります。今は新しい商品を“発見する”場所としてSpaceEngineを提供していますが、今後、購入したお客さんがサブスクに移行しやすくするサポートをしていければ、と思っています」

文=新國翔大 写真=小田駿一

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