成功例としてしばしばメディアで取り上げられるのが、先日、ニューヨーク証券取引所にS-1書類(上場申請)を提出したマットレスブランド「Casper(キャスパー)」、ユニコーン企業入りを果たしているアイウェアブランドの「Warby Parker(ワービー・パーカー)」、コスメブランド「Glossier(グロッシアー)」、スニーカーブランド「Allbirds(オールバーズ)」などだろう。
D2Cスタートアップの成長を語る上で欠かせないのが「リアル店舗」だ。彼らはオンラインでの商品販売もそうだが、ブランドの世界観を体現したリアル店舗を展開し、その店舗を通じてブランドのファンを形成していっている。
日本でもBASEやSTORESといったネットショップ作成サービスが普及したことで、個人やスモールチームがオンラインでブランドを立ち上げるようになった。その一方で、こうした課題も生まれている。
ブランドオーナーの多くは、オンラインだけでなくオフラインでのブランド展開の重要性を理解しているが、リアル店舗の展開は資金面、人材面での負担も多いため、なかなか挑戦しづらい環境にある。
最近ではBASEが丸井グループと連携し、商品を送付するだけでマルイの店舗で商品販売ができる出品型ポップアップスペース「OIOI BASE MARKET(マルイベイスマーケット)」を展開するなど、スタートアップがこの課題解決に取り組んでいる。
そのスタートアップのひとつが、初期費⽤0円でオフライン進出できるプラットフォーム「SpaceEngine(スペースエンジン)」を手がけるスペースエンジンだ。同社は2月3日、CoralCaital、KVP、他投資家から総額1億円の資金調達を実施したことを明かした。
今回調達した資金をもとに、スペースエンジンはサービス改良と顧客開拓を加速させ、より多くのサプライヤー、店舗に使われるようになることを目指すという。
写真=スペースエンジン提供
開始8カ月で商品数は64000点、店舗数は800店舗を突破
SpaceEngineは店舗で商品を展開したいメーカー・ブランドと、新しい商品の販売を希望する実店舗をつなぐ、卸・仕入れのマーケットプレイス。
メーカー・ブランドは自分たちで店を構えることなく、セレクトショップや書店、映画館、スポーツジム、カフェ、美容院など、全国のさまざまな店舗で商品の販売が可能となる。販売の方法も簡単で、商品に合いそうな店舗を検索し、商品の価格、納品数、販売期間を決めれば、委託販売形式で店舗に商品の販売を依頼できる。
初期費用・月額利用料は一切不要だが、商品が売れた場合にのみ卸が発生し、販売価格の50%がサプライヤーの収益となる。
店舗側はSpaceEngineに店舗を登録すれば、メーカー・ブランドから商品の販売依頼が届き、依頼の中で気に入った商品があれば委託販売形式で、店舗で販売できる。
委託販売のやり取りはすべてアプリで完結するほか、仕入れに際して商品を買い取る必要はないため、店舗側は展示会で商品を探し回ったり、売れるか不安な商品を購入したりといったことをしなくて済む。SpaceEngine経由の商品の卸掛け率は65%となっており、売上の35%が店舗の収益となる。
SpaceEngineを利用する店舗の特徴について、スペースエンジン代表取締役の野⼝寛⼠はこのように語る。
「リスクフリーで商品を販売できるため、今まで物販をしてこなかった美容院やネイルサロン、カフェなどがSpaceEngineを使い、初めて物販するパターンが多いです」
2020年1月時点で3600以上のメーカー・ブランドに利用され、取り扱い商品数は6万4000点を超えるほか、店舗数は全国800店舗まで拡大している。
野口によれば、店舗側はスマレジと提携し、クラウドPOSレジ「スマレジ」を導入している店舗はSpaceEngineを使えるようにするほか、サプライヤー側はBASEと提携することで、店舗とサプライヤーの双方を増やしていっているという。