「ショートスリーパーの人って人生得していて羨ましい」
「どうやったら睡眠時間を削って効率的な睡眠がとれるのか?」
眠りに悩みをもつビジネスパーソンと話していたり、メディアの取材を受けたりしていると、未だにこうした声がたくさん聞こえてきます。しかし、重要な結論から言うと、「ショートスリーパーになることは出来ません」。
なぜ日本は、これほど睡眠を削りたいと思う国なのか。その背景には、高度経済成長期に働いた時間だけ会社や経済が成長するのを経験し、睡眠時間を削って仕事をすることもあった世代が、現在の企業や政治の上層部を担っているという構造があります。それ故、十分な休息をとり効率的に働こうという文化がなかなか根付かず、ショートスリーパーになることが自分にとっても、社会にとっても良いと考えてしまう空気があります。
経済協力開発機構(OECD)が実施した統計調査「Gender Data Portal 2019」によれば、1日の睡眠時間は日本は442分(7時間22分)で、OECD加盟国に中国、インド、南アフリカを加えた31カ国中最短という結果になりました。
一方で欧米には仕事よりも家族を大切にする文化があり、残業や長時間労働を是とするのではなく、充実した家庭と健康があるからこそ良い仕事ができる、と考えている人が多いです。
実はニューロスペースが関わってきた企業でも、働き方改革を推進し、残業ゼロとなっている企業では、睡眠時間も平均に比べて圧倒的に長く確保出来ています。やはり、本質的な睡眠改善と働き方改革は表裏一体であり、決して個人ではなく企業が一緒に向き合って実現していくものなのです。
誰でも真似できるものではない
さて、ショートスリーパーに話を戻すと、「そもそもショートスリーパーはいるのか?」という疑問もあるかと思います。
ショートスリーパーは存在します。しかし、ごく少数であり、遺伝など、生まれ持った要因が大きいと言われています。つまり、「もともと素養がない人が容易に真似できない」ということです。
「あの人はショートスリーパーだから人生を得している、自分ももっと起きている時間を増やして人生を充実させたい」という声も聞かれますが、真似をして睡眠時間を意識的に減らすことは、健康被害や疾患の原因になることが分かっており、医師や研究者の間でも問題視されています。
また、ショートスリーパーを育成するセミナーやプログラムがあるとも聞きますが、これには多くの専門家が共通して危惧しています。睡眠時間を削ったところで、得るものばかりでないということです。