米商務長官、新型肺炎で「米国の雇用が拡大」と発言し炎上

ウィルバー・ロス国務長官(Alex Wong/Getty Images)

米国商務長官のウィルバー・ロスは1月30日、中国での新型コロナウイルスの感染拡大が、米国の雇用拡大に前向きな効果をもたらす可能性があると発言した。このコメントに対し、あまりにも無神経な発言だとの反発があがった。

中国での感染者が7000人を超えた新型ウイルスで150人以上の人が亡くなり、感染地域は海外にも拡大している。

ロス長官はFOXビジネスの番組で「感染拡大により、北米に雇用が戻ってくる効果が期待できる。メキシコもその恩恵を受けるかもしれない」と述べた。彼のコメントは、番組ホストのMaria Bartiromoが「新型ウイルスの感染拡大は、世界経済にどのような影響を及ぼすことになるか」との質問に答えたものだった。

ロスは「中国を襲った非常に不運な災難から、利益を得るような話をするつもりはない」と述べつつ、サプライチェーンに与える影響を考慮した場合、「実際問題として、この事態が経済活動に別の要素をもたらすことになる」と述べた。

彼はまた、2003年のSARSが世界経済に与えた打撃を引き合いに出し、今回の新型ウイルスが「考慮すべき新たなリスク要因になり得る」と話した。ロスはさらに、中国でのオペレーションを一時停止した米国企業が別の選択肢を探る必要を迫られると述べ、「結果的に、製造業の雇用を米国に回帰させる要因が増えることになる」と指摘した。

「アップルは既に、中国に置いている製造拠点の移転を検討している。同様の動きを進める企業は他にもある」とロスは話した。

新型ウイルスの感染拡大の懸念の高まりを受け、30日には世界の株式市場に動揺が広がった。アジアでは香港ハンセン株価指数が2.5%以上の下落となり、欧州や米国市場においても株価は下落した。

トランプ政権は以前から中国で製造を行う米国企業に対し、オペレーションを米国に戻すよう呼びかけてきた。1月中旬に米中両国が署名した、包括的な貿易協定の第1段階にも、米国に製造拠点を戻す企業に対するインセンティブが盛り込まれていた。

ロス長官はトランプの長年の親友として知られている。フォーブスは彼の保有資産を直近で、6億ドル(約650億円)と試算している。

編集=上田裕資

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