ソフトバンクも出資の「配膳ロボット」メーカー、世界規模で量産へ

Unitone Vector / shutterstock.com

人工知能(AI)を搭載したロボットの開発を手掛ける米ベア・ロボティクス(Bear Robotics)が先ごろ、ソフトバンクが主導したシリーズAラウンドで3200万ドル(約34億9000万円)を調達した。これにより、飲食店向けの自律走行型ロボット「ペニー(Penny)」の世界規模での量産を目指す。

ペニーは飲食店の接客係をサポートする「フードランナー」。何段かのトレーに乗せて料理や飲み物をテーブルに運び、配膳の手助けをする。現在のモデルは2代目で、1回の充電で8〜12時間稼働する。

雇用を奪うことはない?

ベア・ロボティクスの創業者であるジョン・ハー最高経営責任者(CEO)は、ペニーは接客係の負担を軽減するものだが、雇用を奪うものではないと語る。同社によると、米国では飲食店の接客係の仕事中の歩行距離は、1日当たり平均約8~14.5km。ハーCEOはウェブサイト「Medium(ミディアム)」の投稿で、「ペニーは(店内での)移動に費やされる接客係の労力と時間を削減することにより、彼らが“より多くの時間を顧客のために”使えるようにすることを目指したものだ」と説明している。


Bear Robotics, Inc.

ペニーは全米レストラン協会が主催する見本市で発表されて以来、米国の「アミーチズ・ピザ」をはじめとする飲食店やカジノ、日本、韓国のレストランなどに導入されている。ハーCEOの投稿によれば、「ペニーの導入により、接客係が顧客のために使える時間は平均40%長くなり、顧客の満足度は95%高まった」という。

いずれは人に取って代わる

ロボット工学分野の発展は、飲食業界では雇用の喪失や、人がロボットに取って代わられるという議論に結び付けられることが多い。テクノロジーは食事や休憩、病気と無縁だからだ。

ただ、現在のところペニーは物を運べるだけで、顧客に笑顔を見せたりあいさつしたり、アレルギーに配慮したりすることはできない。そのためハーCEOは、ペニーにできることは接客係がより良いサービスを提供するためのサポートだと考えている。

だが、消費者が何も言わないロボットが料理や飲み物を運んできてくれることに慣れていけば、いずれ「お食事はいかがですか?」と尋ねてくれる接客係の存在が消えても、問題ではないと考えられるようになるかもしれない。

過去に飲食店のオーナーでもあったハーCEOは、米国では74.9%に上る飲食業界の離職率の高さを指摘している。オーナーやマネージャーたちが接客係にストレスを感じ、ペニーを理想的な代替要員と考える理由は簡単だ。ロボットはトイレ休憩を必要とせず、腰が痛いと愚痴をこぼすこともない。さらに、ペニーのようなロボットの技術は、エンジニアやAI専門家により多くの雇用機会をもたらすものでもある。

編集=木内涼子

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