その上で論文は中央銀行に対し、気候変動による被害を緩和する上で、自らの潜在的影響力を増すよう求めている。そのため、中央銀行は自らの役割を拡大し、気候変動問題の軽減を後押しする、より広範な社会経済的変化の推進役となるよう提言している。
こうした目的に役立つ行動の例として、中央銀行は予防的措置として、持続可能な金融という価値観や理念を支持し、長期的利益を重視する投資の推進を後押しすべきだと論文は述べている。また、国際的な通貨・金融当局のあいだで、環境問題に関する協力関係をさらに強化することもできるはずだとしている。
さらに、低炭素経済への移行を支援するために、中央銀行は財政政策においてもより大きな役割を果たすよう努めるべきだと、論文は提言している。
BISの総支配人を務めるアグスティン・カルステンス(Agustin Carstens)はこの論文の序文で、各国の中央銀行に向けて、以下の3点を呼びかけている。
適切なストレステストを通じて、気候に関係するリスクの監視を実施すること。気候に関係するリスク評価を強化するための新しい手法を開発すること。そして、各国の年金基金に、環境・社会・ガバナンス(英語の頭文字を取ってESGと呼ばれる)基準を導入することだ。
カルステンスはさらに中央銀行に対し、将来的な金融の安定性リスクを評価するため、炭素集約度に関するエクスポージャー(リスク資産の割合)の開示に関して、金融セクターと緊密に連携を取るよう促している。