始まりは、何気ない動きに見えた。アマゾンの物流事業担当幹部は2019年、貨物輸送量がピークを迎える時期の処理能力を高めるべく、貨物輸送機と国際コンテナ船に投資していることを明らかにした。
その結果、フェデックスが配達するアマゾンの商品数が減り始めた。
ニューヨーク・タイムズ紙は2019年8月、フェデックスがアマゾンとの陸上輸送契約を終了したことを報じた。フェデックスがネットショッピング最大手のアマゾンと手を切るという苦渋の決断を下したのは、アマゾンが、自社と競合する物流事業を構築しようとしているのが明白だったからだ。
これは、アマゾンにとって典型的なやり方だ。
・既存のeコマース・プラットフォームの規模を活用して、別の新たな大型サービス事業を立ち上げる。
・その後、そのサービスの規模を組織的に拡大して、サービスの提供対象を広げていく。
アマゾンは2004年、クラウドコンピューティングサービス「AWS(アマゾン ウェブ サービス)」の一般提供を開始した。その時点まで、クラウド上でデータ保存とデータ処理を提供するAWS事業の顧客はただ1社、つまり、アマゾン・ドットコムのみだった。
そのAWSはいまや、年間売上高が300億ドルを超え、高い利益率を誇り、顧客にはフォーチュン500企業が名を連ねている。
フェデックスの経営陣は用心すべきだ。アマゾンは物流事業についても、そうしたやり方を踏襲しようとしている。
近いうちに、アマゾンのマーケットプレイス出品者向けに、物流サービスの展開が始まると見ていい。そして将来的には、より規模の大きい企業を積極的に巻き込んでいくはずだ。
フェデックスの2019年第2四半期決算では、純利益が5億6000万ドルと、前年の9億3500万ドルから減少した。売上高もわずかに減り、173億ドルだった。同社はさらに、利益見通しを引き下げたが、これは、アマゾンとの契約が終了したことと、価格設定をめぐる競争が激化し始める状況が待ち受けているためだ。
鍵となるのは価格設定だ。アマゾンは物流サービスの提供拡大へと動いており、陸上輸送の料金値下げが一般化するのは確実だ。
フェデックスは、引き下がろうとしているわけではない。同社のサービスはいまでも業界一だ。しかし、割高な料金を要求できる時代は終わった。これは同社の利益および株主にとって、良い知らせとは言えない。