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2020.01.30 12:00

ヴィクトリアズ・シークレットが身売り、82歳CEOが退任へ

レスリー・ウェクスナー(Astrid Stawiarz / by Getty Images for Fragrance Foundation)

米女性向けアパレル大手「ヴィクトリアズ・シークレット」の親会社、エル・ブランズCEOのレスリー・ウェクスナーが、同社の株式を売却する方針であると1月29日、ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じた。

ウェクスナーは少女買春疑惑で告発された富豪の、ジェフリー・エプスタインの顧客だったと報道されている。WSJによると彼はエル・ブランズのCEO職を辞任し、ヴィクトリアズ・シークレットの株式の一部もしくは全てを、外部に売却する方針という。

この報道を受け、エル・ブランズの株価は29日の市場で一時13%以上の急騰となった。年間売上70億ドル(約7600億円)を誇るヴィクトリアズ・シークレットは、米国のランジェリー市場を代表するブランドだが、近年は売上の減少に直面している。

関係筋によると、売却及び事業継承に向けた協議は今後の数週間で決着する見通しというう。ウェクスナーは1963年に最初のストア「ザ・リミテッド」をオープンし、ヴィクトリアズ・シークレットやアバクロンビー&フィッチなどを傘下に持つ小売り帝国に育てた。

現在82歳のウェクスナーは昨年、少女買春疑惑で告発された後に獄中死した富豪のジェフリー・エプスタインとの親密な関係で強い批判を浴びた。エプスタインは少女売春に絡む人身売買容疑で逮捕された後、昨年8月に刑務所内で自殺していた。

ウェクスナーは当初、エプスタインの犯罪行為について知らなかったと述べていた。しかし、その後、エプスタインが女性に言うことを聞かせるためにヴィクトリアズ・シークレットとのつながりを利用したことが明らかになっていた。

エル・ブランズの株価は昨年、29%低下した。消費者のモール離れや、トレンドの変化の中で、同社の苦戦ぶりは明らかだった。ヴィクトリアズ・シークレットは毎年恒例の年末のランジェリーショーを、昨年は中止していた。エル・ブランズの時価総額は現在、60億ドルを下回っている。ピーク時の2015年の時価総額は290億ドルだった。

57年間に渡り小売り帝国を支配

開示資料によるとウェクスナーは同社の筆頭株主で、約17%を保有している。WSJによると、驚くべきことにウェクスナーは、S&P 500企業の中で最も在任期間が長いCEOとなっている。彼は同社の経営に57年間関わっており、CEOから退いた後もエル・ブランズの会長職にとどまる可能性があるという。フォーブスはウェクスナーの保有資産を45億ドルと推定している。

ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、エプスタインとウェクスナーの交流は1988年に始まり、エプスタインはウェクスナーの財力と女性のネットワークにアクセスしていたという。ウェクスナーはかつて、エプスタインについて「頭の切れる人物であり、信頼できる友人だ」と評していた。しかし、エプスタインに対する疑惑が高まると、彼に資産管理を委託した結果、4600万ドル以上の損失を被ったと述べていた。

昨年9月にウェクスナーは、エプスタインの性的人身売買疑惑について、「実におぞましく、吐き気を催す行いだ」と述べていた。

編集=上田裕資

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