“スペイン語で命乞いをしてみましょう”。
ツイッターで拡散されたミームにより、デュオリンゴ(Duolingo)のマスコットである小太りの緑のオウム、デュオは一躍有名になった。デュオリンゴは大人気の言語学習アプリで、ダウンロード回数は全世界で3億回を超える。このミームはジョークだったが、アプリのしつこさも相当のものだ。スペイン語のレッスンを忘れていると、前日のレッスンと同じ時間に自動的に携帯電話のアラームが鳴り、画面上にオウムのキャラクターのデュオが現れ、学習を続けるよう強く迫る。
デュオに言われるがまま、学習を続ける人の数は全世界で何百万人にも上る。コンピュータ・ギークで「天才賞」と呼ばれるマッカーサー賞を受賞したルイス・フォン・アン(40)が7年前に開発したデュオリンゴはビル・ゲイツや女性タレントのクロエ・カーダシアン、ツイッターCEOのジャック・ドーシーといった著名人からトルコに暮らすシリア難民に至るまで、あらゆる人々を魅了している。
「最も誇らしい気分になったのは、世界一の大富豪が経済的に最下層の人々と同じシステムを使っていると知った時です。それは私にとって特別な瞬間であり、かなり大きなことでした」とフォン・アンは語る。
デュオリンゴには大きな成長余地がある。外国語を学んでいる人の数は世界中で20億人を超えており、オンライン学習が徐々に主流になりつつある。現在、デジタル言語学習の市場規模は60億ドルだが、今後さらに増加し、2025年までには87億ドルに達する見込みだ。一方、この市場は高度に細分化され、世界中で多くのプレーヤーが凌ぎを削っており、支配的地位を確立したプレーヤーはまだ現れていない。
フォン・アンは大学院に通っていた21歳のころ、ボットと人間を判別するため、コンピュータに表示される極端に歪んだ文字と同じ文字列を入力させるキャプチャ(CAPTCHA)を開発したことで広く知られている。
現在、デュオリンゴで学習可能な言語は競合相手を上回る36言語に上る。そこにはハワイ語、ナバホ語、ゲール語などの少数言語が含まれ、さらにはHBOの大ヒットドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」で使われている架空の言語、高地ヴァリリア語を学ぶことも可能であり、実際に120万人がこの言語を学んでいる。また、さらに多くの少数言語に対応できるよう、ウィキペディアと同じように、ボランティアを募っている。