観光より料理を教えて欲しい。訪日外国人のコト消費最前線

寿司の作り方を教えてもらっている外国人観光客/Buddha Bellies Cooking School Tokyoにて

2003年に公開され、監督ソフィア・コッポラの世界観が人気となった「ロスト・イン・トランスレーション」は、言葉が全く通じないながらも不思議な魅力を持つ街としての東京が舞台だった。そして2019年、東京に訪れた外国人は3100万人を超え、03年当時の520万人をはるかに超える。*

2020年に入り、訪日外国人消費動向調査が観光庁より発表された。2019年の旅行消費額は前年比6.5%増の4兆8113億円、また、1人あたりの旅行支出も前年比3.5%増の15万8000円となり、特に消費額では7年連続で過去最高を更新*。

興味深いのは、「費目別」に消費を見た時、国によってお金の使い方に違いが見られること。例えば、一人あたり費目別旅行支出の一部を比較してみると──、

・中国:飲食36721円/娯楽サービス6771円/買物代108800円
・米国:飲食48545円/娯楽サービス8710円/買物代23396円
・豪州:飲食61747円/娯楽サービス19348円/買物代31714円
訪日外国人消費動向調査2019の国籍地域別訪日外国人1人あたり費目別旅行支出から抜粋。費用総額のうち3項目を抽出

買い物に向ける支出がまだまだ多い中国に対し、欧米の一部では食べ物や娯楽に支出を向ける。モノ消費からコト消費の一端と言えるだろう。

*日本政府観光局 訪日該客数年表参照/観光庁2020年1月17日発表速報値参照

和食をシリタイデス


禅、登山、舞妓体験といった多くの体験型観光が注目される中、外国人が実際に和食を作り、味わう料理教室が人気だ。無形文化遺産にもなった和食、それを自分たちで作ることに、彼らはどんな魅力を感じているのか。今回、東京で10年以上前から展開する2つの料理教室に顔を出させていただいた。

AM9:00 ───────

at:Buddha Bellies Cooking School Tokyo.(東京都文京区)
⇒ 多くの資格を持つ主宰の小門亜裕子とパートナーで職人でもある修吾が教える本格的な和食料理教室

Buddha Belliesでは、この日、寿司レッスンの前に魚のさばき方の特別レッスンが入っていた。参加者は二人。ニューヨークから家族で観光に来たジャズミュージシャンのエドゥインは単独でこのスクールを予約した。もう一人は在日米軍勤務のヘザー。好対照な組み合わせでアジを三枚におろすミッションだ。

職人の指導を受け魚をさばく外国人たち

恐る恐る触るエドウィンに対して、料理経験豊富で手際の良いヘザー。初対面の二人だが、互いに動画を撮り合いながら交代で指導を仰ぐ。

亜裕子のパートナーである小門修吾は弱冠16歳から包丁を握るプロの職人だ。職人なら数分もかからないアジの三枚おろしを20分もかける初心者に対し、海外のナイフとは作りの違う日本の包丁の持ち方から、刃入れ、切り方までを丁寧に指導する。綺麗に仕上げるコツと日本の包丁は絶妙な関係にあることをふたりは理解していく。

アジの三枚おろしに挑戦する外国人生徒

エドウィンは「観光もいいけど、せっかくなら何か学んで帰りたい。家でパーティをする時に、自分で寿司が作れたら良くないかい?」と言い、ヘザーも「違うカルチャーにまず興味があるの。お寿司も大好きだし、だったらレッスンをやるべきでしょ! ということ」。ヘザーは寿司柄の「靴下」を履くほど文化への興味関心を表現するタイプ。今回は2回目のレッスンだそうだ。

二人はこの後、新しい参加者と共に寿司作りに入る。

さて、もう一つの取材先、YUCa’s Japanese Cookingもレッスンが始まる頃だ。
次ページ > コト消費をクリスマスプレゼントなんて粋じゃないですか

文=坂元耕二 写真=西川節子

ForbesBrandVoice

人気記事