海の酸性化でカニの甲羅が溶けている、米研究者が指摘

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海の酸性化が進んだことにより、米国の西海岸に生息するカニの甲羅が溶け始めていることが最新の研究で明らかになった。

学術ジャーナルのScience of The Total Environmentで発表された論文で、海水の酸性化の進行により、サンフランシスコ名物のダンジネスクラブ(アメリカイチョウガニ)の、若い個体の甲羅の発育に影響が及んでいることが指摘された。

人類が大気中に放出する二酸化炭素の約3分の1は海によって吸収されるが、それが海水の酸性化につながっている。海洋の酸性化は、海の生態系に深刻なダメージを与える。

貝類やサンゴなどの海の生物は、海水中に含まれるカルシウムイオンと炭酸イオンから、炭酸カルシウムの骨格や殻を作っているが、海洋の酸性化が進行し、海水中の水素イオンが増えると、炭酸イオンが減り、炭酸カルシウムの殻の形成が困難になるのだ。

カニのような甲殻類は海洋酸性化の影響を最も受けやすい。なぜなら、彼らの体を覆う殻は直接、海水に接触しているからだ。太平洋の海水の酸性化が進むと、ダンジネスクラブの生育に重大な被害が及ぶことは、数十年前の研究でも指摘されていた。

今回の研究結果は、太平洋北西部沿岸の漁師たちが漁業の将来を考える上で、重要な指標を提示したといえる。しかし、海の酸性化を食い止めるためには、人類による大気中への二酸化炭素排出を減らす以外の方法は存在しない。

今回の論文の主執筆者を務めた科学者のNina Bednarsekは、米国海洋大気庁(NOAA)が1月23日に発表した声明で次のように述べた。「カニたちの被害が実際に進んでいるとすれば、人類はより多様な種類の生物の変化に関心を注ぎ、手遅れになる前に対策を講じる必要がある」

編集=上田裕資

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