ビジネス

2020.02.02 10:00

ブランド戦略は経営者が考えるべき? ブランディングを考える(後編)

飯村 彩花
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──「顧客中心主義」はどのようにすれば実現できるのか?

並木:会社における意思決定をどう変えるか、に尽きる。例えば、アマゾン・ドット・コムの経営会議では“空席”があり、そこに“顧客”がいることを想像しながら議論している。経営陣が意思決定をする際、顧客の意思決定が反映されるような仕組みづくりが不可欠だ。
 
顧客を理解するには、現場からのレポートを読むだけでは不十分である。かといって、「現場主義」が最適解ともいえない。レポートを読むことの対極にあるのが現場主義ならば、それは両方とも違う。要はバランスだ。腹落ちできるレベルの報告をもとに、ある程度の現場への理解がバランスよくできれば、日本企業に見られがちな部署間の断絶を乗り越えられるかもしれない。

──日本企業がグローバルに飛躍するために必要なブランディングとは。

並木:必ずしも、時間をかければブランドが育つわけではないことを肝に銘じるべきだ。先述のとおり、日本では自然発生的にブランドが生まれてきた。だがそれを育む思想やシステムが不十分であるため、今では真のグローバル化を果たすうえでの阻害要因にすらなりつつある。「Best Global Brands 2019」で上位にランクインしたグーグル(2位)やサムスン(6位)は、意図をもって自社のブランドを育ててきた会社の代表例だ。

実体や歴史がなければできない、ということではない。もはや、「実体を作れば、イメージは自ずとついてくる」という発想ではダメだ。企業を作るのと同時に、企業イメージを作らなくてはいけない。ゴールが見えたら、そこへ向けたブランドイメージを作ることが大事。
 
歴史がブランドを作るのではない。ブランドで歴史を作るのである。


インターブランド◎1974年創業、世界最大のブランディング専門企業。世界14カ国、18のオフィスを拠点に、戦略、クリエイティブ、テクノロジーの組み合わせにより、顧客のブランドとビジネス双方の成長促進を支援。グローバルブランドの価値を評価したランキング「Best Global Brands」で知られる。インターブランドジャパンは1983年に設立。日系企業、外資系企業、政府・官公庁などさまざまな組織・団体を顧客にもつ。

並木将仁◎インターブランドジャパン代表取締役社長兼CEO。プライスウォーターハウスクーパース(PwC)、グローバルプラクシス、マッキンゼー・アンド・カンパニー、カート・サーモンを経て現職。ボストン大学で経営学士号、HEC経営大学院(HECパリ)とトルクァト・ディ・テラ大学(UTDT)で経営修士号を取得。

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インタビュー=Forbes JAPAN編集部

この記事は 「Forbes JAPAN 1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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