当局によると、カメラが設置されるのは特定のエリアに限られ、機器ごとに個別の監視対象リストが与えられるという。さらに、撮影対象はごく狭い範囲に限定され、カメラの周囲では警官らがリーフレットを配布し、監視活動が実施中であることを周知させるという。
「我々が用いるのは信頼性が確認されたテクノロジーで、実施にあたっては、透明性の高いアプローチを心がける」と、警視庁の担当者は話した。類似したテクノロジーは既に、英国の多くの民間企業で用いられているという。
しかし、人権保護団体はこの取り組みに懸念を示している。
「これは警察による危険で抑圧的な動きだ。顔認証テクノロジーは当局に、これまで存在しなかった権力を与え、あらゆる市民を監視可能にする。プライバシーや表現の自由が脅かされる」と、人権団体Liberty(リバティ)のClare Collierは述べた。
「大規模な監視ツールの導入は、政府にこれまで以上の権力を与え、市民から自由を奪うことにつながる」とCollierは続けた。
英国政府のプライバシー保護監督機関の情報コミッショナー局(ICO)は昨年、公共の場での顔認証テクノロジーの活用の実態を調査し、警察がこの技術を利用する際には一定のガイダンスが必要であると結論づけた。
そして今、ICOはロンドン警視庁がアドバイスを受け入れたと認定した。「ロンドン警視庁はリアルタイム顔認証テクノロジー(LFR:live facial recognition technology)の導入に向けて、適切な運用ルールを策定した。監視対象は限定され、利用は法の執行に必要な場合に限られている」とICOは述べた。
「英国議会もこのテクノロジーの導入が、データ保護法に即した形で実施されるものであることを承認した」とICOは述べている。
ただし、ICOは今後、ロンドン警視庁からより詳細な情報の提供を受けることを望んでおり、英国政府に対し、リアルタイム顔認証の運用に関わる明確なルールづくりを求めている。
一方、EUでは公共エリアでの顔認証テクノロジーの活用をしばらくの間、包括的に禁止する措置が導入されようとしている。間もなくEUから離脱する英国は、この技術の実験場としての役割を果たすことになるのかもしれない。