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2020.02.11 11:00

バレンタインデーに、ある航空会社がもっとも盛り上がる理由

バレンタインデーは、小売業界にとって一年で最大の商機でもある。毎年の百貨店のチョコレート売り場や、今年で開催18回目を迎えたチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」での活況ぶりを見れば、それは明らかだ。

同時に、各企業のチョコレートを売ること以外の、バレンタインデーに関する取り組みも広がっている。

北海道の老舗「六花亭」は、イラクのがんの子どもたちに薬を届ける「JIM-NET(ジムネット)日本イラク医療支援ネットワーク」による、チョコレートの購入が募金に繋がる「チョコ募金」のチョコレートを2007年から原価で提供している。

ゴディバは18年、「日本は、義理チョコをやめよう」という広告を日本経済新聞に掲載した。義理チョコとしても多く購入されるブランドだが、義理チョコをやめて、本当に大事な人にだけチョコを贈ろうというメッセージが消費者から共感を得た。

バレンタインデーを、チョコレート以外のギフトを贈る特別な日としている企業の一社として、アメリカの「デルタ航空」を挙げることができる。同社では、会計年度(1月~12月)の決算が黒字であれば、純利益の一部を従業員に還元している。

2007年から、その支払い日は毎年2月14日のバレンタインデーと決まっており、デルタ航空で働く全世界50カ国以上の約9万人の従業員にボーナスとして支払われる。

日本企業が毎年ボーナスを支給することは一般的だが、この「常識」が世界各国で通じるわけではない。

デルタ航空では13年から6年連続、10億ドル以上の従業員への利益分配を実現してきた。昨年の62億ドルの純利益を受けて、20年は過去最高額となる16億ドルの利益分配が実施される予定だ。

最高経営責任者(CEO)のエド・バスティアンが「私たちの成功の基盤となっているのは、2億人のお客様に最高の旅行体験を提供するために力を尽くしている、デルタ航空の全従業員です」と語っているように、同社は、最大の資産は従業員であるという姿勢を長年貫いてきた。

1月7日から10日にラスベガスで開催された世界最大のエレクトロニクスショー「CES」では、バスティアンが航空会社のCEOとして初めて基調講演に登壇、ブースも出展した。

会場では、ユタ州のロボティクス企業「サルコス・ロボティクス」と提携して開発した、ウェアラブル・ロボットスーツを発表。空港や貨物倉庫で重い荷物を取り扱う従業員の安全と、労働環境の向上を狙った取り組みの一環で、今年から順次テスト使用を進めていくという。

近年、企業の社会や顧客だけではなく、従業員との向き合い方も注目を集めている。

昨年、日本では「セブンイレブン・ジャパン」加盟店従業員の残業代の一部、4億9000万円が未払いだったことが発覚。アメリカでは、「ウーバー」が同社の運転手を、従業員ではなく独立請負人として誤分類したことで財務的な利益を得たとして、未払い分の雇用税6億4000万ドルを労働局から請求されたことは記憶に新しい。

日本でも、2月14日は女性が好きな男性にチョコレートを贈るだけの日ではなくなっているように、世界中でバレンタインデーの役割が多様化している。企業におけるバレンタインデーの意味が、今後さらに細分化されることもあるはずだ。

写真提供=デルタ航空 文=守屋美佳

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