世界経済が失速しても米株式市場が好調な理由と、「2つの火種」

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そうした市場心理を台無しにするものがあるとすれば、それはインフレの再来だと話すのは、商業銀行フォーブス&マンハッタン(Forbes & Manhattan)の最高経営責任者(CEO)スタン・バーティ(Stan Bharti)だ。

「過去8年から10年のあいだ、株式市場は高騰し、低金利という環境が続いた」とバーティは言う。「インフレの危険性がある」

その危険性はどの程度なのだろうか。「株式が10年間にわたって投資家に年間12%ほどのリターンを提供している場合、大きな調整局面に入るのは時間の問題だ」とバーティは続けた。「賢い投資家は実物資産に軸足を移している」

賢い投資家が実物資産に資金を動かしているのには、別の理由もあるかもしれない。それは、世界全体で債務が増大していることだ。国際金融協会(IIF)の調べでは、2019年末における世界全体の債務残高は255兆ドル(約2京7807兆円)と、過去最高に達している。

世界人口は77億人なので、1人当たりに換算した債務額は約3万2500ドル(約354万円)になる。

債務の増大によって、いずれは消費支出が落ち込み、長年にわたる世界的な金融緩和から生じていたバブルがいくつも弾ける事態になりかねない。

まさにそうした事態が起こったのが、2008年から2009年にかけて生じた世界金融危機だ。株価がアメリカで37%、ドイツで42%、中国で62%下落したほか、商品相場もマイナス37%となった(原油と銅の価格は54%下がった)。投資家は逃げようがなく、ポートフォリオ全体で損失を被った。

ウォール街を苦しめる原因が、インフレになるのか、それとも債務増大になるのかはまだわからない。ただ、ひとつだけ明らかなことがある。ウォールストリートのバリュエーションが限界に達しつつあることだ。市場心理を変えかねない「テールイベント」(発生は稀だが、一度起きるときわめて大きな影響が及ぶ事象)が起きれば、投資家は打撃を受けやすくなる。

ウォール街に足を踏み入れてそれなりの年月が経っている人なら、イヤというほど知っているだろう。推定が現実となったときに、過熱した株式市場は重力に逆らえないことを。

翻訳=ガリレオ

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