子どもたちは成長するにつれ、責任を持って自ら選択した道を進むようになった。トスカは進学先の高校を自分で選んだ。3人とも自分が選んだ大学に出願し、奨学金や学生ローンも自分で申し込んだ。このように育ったのも、衣食住を確保するために懸命に働いていた私の姿を見ていたからだ。
子どもたちは大学時代をひどい環境で過ごした。床にマットレスを敷いたり、6人のルームメイトと共同生活をしたり、ボロボロの家に住んだりしていたが、それでも苦には思わなかった。子どもは幼少期に贅沢を覚えなければ、うまくやっていける。甘やかす必要はない。親がすべきは、子どもに安全な環境を確保してあげることで、後は自分たちの判断に任せればいい。
これほど成功した子どもたちを育て上げた方法について、私はよく聞かれる。私がしたことは、子どもが自分の興味を追求するよう仕向けただけだ。子どもが起業したいと思い、それが良いアイデアだと思えば、サポートしてあげること。礼儀作法は教えつつも、何をしたいかは自分で決めさせるべきだ。
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私は子どもたちを愛しているし、子どもたちが成し遂げた全てのことを誇りに思っている。長男のイーロンは環境を救う電気自動車を作り、ロケットを打ち上げている。真ん中のキンバルは産地直送の食材を使ったレストランを経営し、国内各地にある支援不足の学校で子どもたちに果物や野菜の育て方を教えている。末っ子のトスカは、エンターテインメント会社を経営し、ベストセラー小説を原作としたロマンス映画を製作・監督している。3人の関心事はそれぞれ違う。私は必要な時には子どもたちを励まし、支援し、アドバイスを求められれば助言した。
例えば、イーロンは子どもの頃、読書が大好きで、あらゆる本を読んでいた。私も読書は好きだが、読み終わるとすぐにストーリーは忘れてしまう。ところがイーロンは、読んだ内容を全て覚えていて、常に情報を吸収していた。そんなイーロンを私たちは「百科事典」と呼んでいた。というのも、イーロンはブリタニカやコリアーズの百科事典を読破して、全てを記憶していたからだ。私たちはそれを理由にイーロンを「天才少年」とも呼んでいた。イーロンは、どんなことを聞いても答えてくれた。