NRI(野村総合研究所)のエグゼクティブ・エコノミスト木内登英氏は「SARS並みの規模で感染者数が増えており、訪日インバウンドにはSARSの流行期以上に大きな影響が出るだろう」と指摘する。
2003年に流行したSARS=重症急性呼吸器症候群。こちらも当時、新たに確認された種類のコロナウイルスによる感染症で、2002年11月に中国広東省で発生し、患者数は8069人、うち775人が重症の肺炎で死亡した。2~3カ月で北米、南米、ヨーロッパ、アジアなど20カ国以上に広がり、2003年7月にWHOによる終息宣言が出された。
厚労省によると、今回の新型コロナウイルスは、2019年12月31日、中国政府当局により世界保健機関(WHO)に対して原因不明の肺炎の発生が報告され、今年1月9日に、肺炎患者から新型コロナウイルスが特定されたという。SARSの流行から7年。ここ数日間で新型コロナウイルスの患者数は急増したが、現時点でSARSよりは感染力は低いとされる。
SARS流行期に比べ、中国からの訪日観光客は21倍
中国海外旅行研究所の予測によると、2020年は延べ700万人以上が春節の間に海外旅行をするという見込みが出されていた。旅行先としては日本がもっとも人気だったという。
だが、中国政府は、国内のすべての団体旅行に加えて、1月27日には日本を含めて団体客による海外旅行も禁止した。また春節を3日間延長して来月2日までとする措置を取っている。新型コロナウイルス発生当初は、中国経済に与える影響が主要なトピックスだったが、このニュースを受け、日本ではインバウンド需要への影響が案じられるようになった。
木内氏は、日本経済への影響を考える際に、中国からの訪日観光客の急増を指摘している。2002年に中国人訪日観光客は約45万人だったが、2019年は959万人で、約21倍に増加、訪日観光客の中では中国人の数が最も多い。木内氏は「訪日観光客が落ち込み、日本での消費活動が減った場合、SARSの発生時より大きな悪影響を与える可能性がある」という。