普段使いの「AIoTヘルスケア製品」が続々 デザインが勝機を握る?

AerBetic

特別な医療機器や端末ではなく、普段使いの日用品として人々の健康を守るヘルスケア用AIoT製品が続々と登場する気配だ。

2020年のコンシューマーエレクトロニクスショー(CES:ラスベガス開催)では、ウェアラブルウォッチのようなデザインの糖尿病警報装置「AerBetic」が、イノベーションアワードを受賞した。

同製品は、呼吸や手首の皮膚を通じて血液中のグルコースの量をリアルタイムで測定。糖尿病患者本人もしくは家族が、糖尿病のリスクをモニタリングできる仕組みを開発。高血糖の状態が長く続くと、血管や神経を損傷し健康に害をもたらす。そのため血糖値の適切な管理が課題となるが、AerBeticは従来の測定器と比較して低価格かつ安定的にモニタリングを行えるようサービスを提供していく。


AerBetic動画

2015年に東京大学染谷研究室/JST ERATO染谷生体調和プロジェクトからからスピンオフしたベンチャー企業、Xenomaも、各国から大きな注目を浴びる。同社では、普段人々が日用品として着るような服と同じ着心地のIoT衣服・電子皮膚「e-skin」を開発・展開している。そのe-skinをベースにした高齢者向けスマートパジャマ「e-skin Sleep & Lounge」は、AerBeticと同様にCES2020でイノベーションアワードを受賞した。

e-skinは軽度な転倒と、ベットからの転落など深刻な事態を区分できるくらいに精巧だとされており、その技術をベースにしたスマートパジャマは、就寝中に発生する高齢者のヘルスケア関連のさまざまなビックデータを収集することができるという。また日常的に活動量を測定することも可能で、スマートスピーカーなどを通じて、運動や睡眠に関するアドバイスを提供することもできる。

高齢者の介護や見守りにとどまらず、人々の健康維持を考える上で、プライバシーや尊厳をいかに冒さないかという視点はビジネス的にもとても重要となるだろう。

例えば、監視用カメラや専門の医療機器は人々とって、コストはもちろん心理的圧迫や不快感など、言い換えれば使用までのハードルが高い。しかし、自然に身に着けることができるスマート衣服やガジェットであれば、消費者の心理的ハードルを取り除くことができる。

AIoT機器は人々の生活に密着したものであるため、他の製品以上にいかに「ユーザーファースト」であるかが成否を分けるかもしれない。どれほど精巧なセンサ、もしくはアルゴリズムが搭載されていたとしても、使ってもらえなければ意味がない。さらに言えば、デザイン性の向上などをきっかけに、「使ってもいい」から「使いたい」という風に、ユーザーの積極性を獲得していくことが好ましいだろう。

技術だけでなく、人間の感性や美意識に受け入れてもらえるような最新のAIoTヘルスケア製品の登場に期待したい。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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