放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。

 
観光産業に携わる人々は売りになるアクティビティが出尽くしたと思っているかもしれない。しかし、実はアイデア次第だということだ。地元の人が「これで喜ぶのかな?」というようなことが、逆にアクティビティになるかもしれない。観光において「視点」というのはいちばん大事なもので、それは地元の宝物を発掘するためのツルハシのようなものなのだと思う。

ストーリーが購買欲をそそる

では、僕にとっての最高のラグジュアリー体験は何だったか。ランドローバー社のメディアツアーである。これまでに2、3回参加したのだが、アンデスの山々を旅した8日間は特に印象的だった。

ペルーの空港からプライベートジェットで降り立ったのは、ガタガタ揺れる土の滑走路。そこに数台のランドローバーが並んでいて、僕はもうひとりの日本人と一台に乗り込んだ。隊列をつくって進むランドローバーはそのまま5000m級の山々を行く。途中で胸ぐらいの深さの川を渡ったこともあった。自分の車だったら怖くてとても入れないが、サポートが付いてくれているのでチャレンジできるのだ。

夕方、ようやくたどり着いた草原には大きな白いテントの下、ダイニングルームが設えてあった。タキシードを着た執事たちが「いらっしゃいませ」と歓待してくれ冷えたワインやシャンパン、温かい料理がふるまわれた。ディナー後にテント外に出ると、大きな焚き火スペースがあり、今度はシングルモルトがサーブされた。この場所まで案内してくれた馬乗りは夜半に馬を走らせなくてはいけないとかで、朧月夜のもと、馬が駆ける姿が遠くに見える。蹄の音、薪のパチパチと爆ぜる音、弦楽隊の演奏、満点の星……。それはまるで、一夜限りの夢物語だ。

“物語”は人の心を揺さぶる。その感動の揺れ幅の大きなものを、僕はラグジュアリーと定義しているのです。

イラストレーション=サイトウユウスケ

VOL.52

あるときは圧倒し、あるときは心を打つ「建築...

VOL.1

30万円の宝物 [妄想浪費 vol.1]

PICK UP

あなたにおすすめ

合わせて読みたい