テクノロジー

2020.01.28 07:00

スタートアップが挑む、水をめぐる革新と持続可能性


ネビアのはじまりは、共同創業者のひとり、カルロス・ゴメス・アンドナエギ(Carlos Gomez Andonaegui)が、自身が経営するメキシコシティの高級スポーツジム・チェーンで、水の消費量を削減したいと考えたことだった。同チェーンでは日々、2万5000人の会員がワークアウト後にシャワーを浴びていた。アンドナエギが、84歳になる元エンジニアの父親に相談したところ、父親はグーグルを検索し、ロケット用エンジンなどに使われる工業用噴霧ノズルを見つけてきた。

アンドナエギはその後、メキシコシティの非営利組織で働いていたアメリカ人のフィリップ・ウィンター(Philip Winter)に協力を求めた。ウィンターは、発展途上国の水害多発地域向けに、水を使わない堆肥化トイレを製造する企業で働いた経験を持つ人物だ。

2人は、噴霧ノズル用部品をさまざまな国のオンラインショップから取り寄せると、アンドナエギの父親のガレージでそれらを組み立てた。そうして完成したのが、細かい粒子状に水が噴き出すシャワーヘッドだ。スチーマーのようなもので、噴射される表面積が10倍になる一方、使用する水の量は、一般的な家庭用シャワーヘッドの70%になった。


(Nebia)

アンドナエギとウィンターはそのころから、家庭用品業界のテスラ(Tesla)と呼ばれるようなブランドになりたいと思い描くようになった。2014年にサンフランシスコに拠点を移すと、そこでガブリエル・パリシアモン(Gabriel Parisi-Amon)と出会う。パリシアモンは熱流体解析が専門の機械エンジニアだが、当時はアップルでiPhoneの開発に携わっていた。

ウィンターはパリシアモンを自宅に招き、シャワーを浴びてもらった(それ以外に、彼らがビジネス上の関係を構築する方法はなかった)。ほどなく、パリシアモンは3人目の共同創業者になった。

ウィンターは、「サンフランシスコに移り住んで、シャワーを製造するスタートアップを立ち上げようとしていると言うと、たいていは変な顔をされた」と振り返る。「けれども、『へえ、それはすばらしいね』と言って理解してくれる人が時々いた」

3人がつくりあげたものを認めてくれたのが、Airbnbやドアダッシュ(DoorDash)、ドロップボックス(Dropbox)などの立ち上げにかかわった著名なアクセラレータのYコンビネータだ。2015年には、アップルの伝説的経営者ティム・クックとの偶然の出会いがあり、すぐに個人的な支援を受けた。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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