コービー・ブライアント墜落死で懸念の「プライベートヘリ」の事故率

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米プロバスケットボール(NBA)の「ロサンゼルス・レイカーズ」の元スター選手、コービー・ブライアントが1月26日、ヘリコプター事故により亡くなった。ブライアントと娘のジアナが搭乗したS-76ヘリコプターは、霧に包まれた米ロサンゼルス郊外で墜落し、乗客乗員9人全員が死亡した。

12人乗りの豪華ヘリコプターのS-76は、企業幹部やVIPの送迎に幅広く用いられている。事故を起こした機体は地面に激しく激突し、残骸は広範囲に飛び散った。専門家らは事故原因の究明は難航する見通しだと述べている。

オレンジカウンティからロサンゼルス北部に向かったS-76は、サンタモニカ山脈上空を飛行中に急降下し、消息を断っていた。連邦航空局(FAA)と国家運輸安全委員会(NTSB)が現在、事故の調査を行っている。

調査担当者によると、当日のサンタモニカ山脈周辺は低い雲が垂れ込め、霧により視界が悪かったという。視界不良が事故の一因となった可能性もあるが、機体の降下速度から考えて、整備不良が原因だったことも考えられるという。


ヘリコプターの墜落現場(Getty Images)

ヘリコプターの墜落事故は、航空機以上に激しい火災を起こす傾向があり、事故原因究明のための残骸の入手が困難だ。問題の機体は1991年に製造されたもので、データレコーダーを搭載していた可能性は低いという。

ブライアントが搭乗していたS-76Bは、Island Express社が所有するもので、2015年に登録されていた。1976年に市場に投入されたS-76は数十年に渡り、企業幹部やVIPの輸送に用いられてきた。

小型のプライベート機の安全性は一般的に、大型の定期便航空機を下回るとされている。しかし、「ゼネラル・アビエーション」(ヘリコプターを含むプライベート機全般)カテゴリで、ヘリコプターの安全性は、小型の固定翼機を上回っている。

中でもツインエンジン仕様のS-76は、最も信頼性の高いヘリコプターの1種とされている。米国におけるヘリコプターの死亡事故発生率は2019年に、飛行時間10万時間につき0.82件とされていた。

これに対し、ゼネラル・アビエーション全体の死亡事故発生率は2018年に、飛行時間10万時間につき1件を上回っていた。

しかし、U.S. Helicopter Safety Teamのデータでは、軍事用や医療用を除くプライベートヘリコプターの死亡事故発生率は、不釣り合いに高いことが分かっている。2009年から2019年の間の全ヘリコプターの運行時間に占める、プライベート機の割合はわずか3%だったが、死亡事故の22%がプライベート機によるものだった。

編集=上田裕資

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