Q5 チケットが入手困難ってホント?
A5 東京公演のチケットは発売数時間で完売することもあり、土日は特にとりづらいかもしれません。というのも、東京のほうが公演期間が短く、公演の数自体も1公演少なく、劇場キャパシティも大阪731席に対し東京560席なので、競争率が高いのです。しかし大阪では当日券も比較的買いやすく、また、部分料金で一幕だけ鑑賞できる幕見席もあります。東京に比較すると気軽に楽しむことができるので、関西在住の人はもちろん、出張や旅行で大阪に行くついでに文楽鑑賞としゃれこんでみてはいかがでしょう。
チケット購入は、両劇場共通の「国立劇場チケットセンター」で、インターネットまたは電話での申し込みが便利。劇場窓口でも扱っていますが、予約開始は1日遅くなります。
Q6 文楽の運営母体は? みんな公務員なの?
A6 文楽劇場・国立劇場の運営と定期公演の制作は、独立行政法人日本芸術文化振興会が行っています。正確には国営ではありませんが、20世紀末の行政改革で生まれた独立行政法人ですから、本来、公共性の高い団体とはいえます。一方、定期公演以外の、地方巡業などの公演制作は公益財団法人文楽協会が行っています。
また、振興会の定期公演に技芸員を派遣する業務も担当しています。この点は、芸能人の所属プロダクションに近い機能といえるでしょう。技芸員は、立場としては個人事業主で、協会と契約して所属しています。
技芸員は男性のみ。太夫19名、三味線20名、人形遣い43名の計82名(2019年11月現在)で、うち人間国宝は4名。
Q7 大阪市の補助金問題はどうなった?
A7 2012年に当時の大阪市長・橋下徹さんによる、文楽協会への補助金凍結発言に端を発する一連の騒動ですね。さまざまな経緯を経て技芸員と市の会合がもたれた後、13年度からインセンティブ方式(定期公演の動員数と補助金の金額を相関させる制度。目標値の高さの適切性などが物議を醸したが、14年には目標値を達成して満額支給された)が採用されましたが、それも15年度からは廃止されました。この方式には当初から、文楽協会の補助金に対し、振興会主催の定期公演の動員数(つまり協会の管轄外の数値)を指標とするという齟齬の問題が指摘されていました。
またこの問題は、大阪市の財政改革という側面で強調されてきたところがありますが、そもそも11年の時点ですでに補助金全体の比重は府・市以上に国にあった点なども踏まえ、文化芸術助成のあり方という観点から、今後の検証が待たれるでしょう。
こだま・りゅういち◎1967年、兵庫県生まれ。早稲田大学大学院から、東京国立文化財研究所芸能部、日本女子大学などを経て、早稲田大学教授。早稲田大学演劇博物館の展示等にも携わり、2013年から副館長。専門は日本演劇。編書に『能楽・文楽・歌舞伎』、共編著に『最新版歌舞伎大事典』、共編著に『最新版歌舞伎大事典』など。文楽技芸員研修講師、「朝日新聞」(東京)歌舞伎評など担当。