生け花で右脳を鍛える。働き方改革 x 伝統文化の可能性

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疲労感を取るためには、まず「休養が大事」と、睡眠時間を増やしたり、日中の仮眠や休憩時間を充分に取るなど、「休むこと」にフォーカスしている人は多いのではないでしょうか。

私自身がそうでしたが、それでもなかなか良好な状態にはならず、困っていた時に、山梨県のリトリート施設で座禅を組む機会がありました。すると、いままで経験したことのないリフレッシュ感を味わうことができました。

過去にも座禅を行ったことはあったのですが、この時は明らかに心身に変化が起きたことがわかりました。後日、振り返ってみたところ、座禅中の深くゆったりとした呼吸や、雑念に囚われず、それを「観察する」ことがよかったのだと思います。

その後も、高野山へ座禅に出かけるなど、心身の状態を整えたいときには、頻繁に座禅を実践しています。

前回のコラムで書いた能、そして座禅はいずれも日本の伝統的な文化で、呼吸を整えるのには有効だと思うものの、ともにハードルが高いものでもあります。なので、今回は同じく日本の伝統文化でありながら、もう少し気軽に始められる華道について取り上げたいと思います。

華道で右脳的センスが豊かに

オフィス内に植物があると、メンタル面にポジティブな効果があるということを聞いたことはありますか?

私が華道に触れたきっかけは、2016年に始めた渋谷ウェルネスシティコンソーシアム(健康経営の勉強会)に参加した企業の方から、「生け花マインドフルネス」を広めたいと打診をいただいたことでした。

元々、私は植物が好きで、自分の部屋に観葉植物を飾っていましたが、「さすがにオフィスで生け花は……」と思い、途惑っていました。とはいえ、気になってもいたので、実際に華道の家元を訪ねてみました。すると、彩り豊かな花や木や、本物の花の香りに満ちた空間によって、リラックス効果が得られ、心が明るくなるのを感じたのです。

花を生ける時は、花と木をどのように配置するかの黄金律を頼りにイメージして、木や茎を切りながら生けていきます。一度切ったら元に戻せないため、切るときのドキドキ感は、集中力も高めてくれます。

生け花
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生け花を体験してわかったのは、目の前の花の配置や角度や向きを、イメージしながら動かすことで、無我夢中になり、「いま」に没頭できるのはもちろんのこと、空間認知力や想像力といった、いわゆる右脳的センスも豊かになるということです。

初心者のうちは、普段は使わないような脳の領域を使うのでエネルギーを使います。だからこそ、終わったときには達成感がありました。もちろん、慣れてくるに従い、心落ち着く時間にもなるのでしょうが、実際に体験してみると、当初想像していた生け花へのイメージとはがらりと変わりました。それと、花木の魅力を知ったことで、自宅のリビングや机に、植物が日に日に増えていきます。
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文=平井孝幸

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