中東派遣、「カードを間違えた韓国」と「5倍のカネを背負う日本」

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韓国政府は21日、中東のオマーン湾やペルシャ湾に韓国海軍を派遣する方針について明らかにした。日本政府はすでに昨年12月、同様に海上自衛隊の派遣を閣議決定した。

昨年5月に起きたホルムズ海峡でのタンカー爆破事件以来、日韓両国は米国から米主導の有志連合に加わるよう何度も強い要請を受けてきた。ただ、日韓の対応には大きな違いがあった。

「米VSイラン 日本の仲介と自衛隊派遣の内幕」でも明らかにしたが、日本政府内では米国の強い派遣要請を受け、早々に「派遣不要論」が姿を消した。有志連合に参加するか、防衛省設置法の「調査研究」に基づく独自派遣を行うか、慎重に検討を加えたうえで、12月に独自派遣の決定に至った。

事件発生から7カ月を要したわけだ。自衛隊関係者は、その理由の一つとして独自派遣する部隊の編成に要する時間も考慮したと明らかにした。すでにアフリカ・ジブチ沖に海賊対処のために派遣していた海自艦艇1隻を転用することはしなかった。この関係者は「海賊対処のために派遣された隊員やその家族のことを考えれば、いきなり危険度が更に高い別の任務を命じることは問題があると考えた」と語る。

派遣決定までに時間がかかった背景には、有志連合にどの程度の国々が参加するのか見極めるとともに、米国と対立するイランとの関係悪化を避ける狙いもあった。安倍晋三首相が昨年6月にイランを訪問し、最高指導者ハメネイ師との会談に成功。閣議決定に先立つ12月にはロウハニ大統領を招いて、日本とイランの首脳会談も行った。

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昨年6月、安倍首相はイランの最高指導者ハメネイ師との会談を行った

もちろん、日本には米国とイランの仲裁を主導する国力はない。米政府関係者の1人は「日本側から、何度もイランとの仲裁を打診されたが、No thank youだと答えた」と証言した。

安倍政権の政治的パフォーマンスという側面も否めない。ただ、在京外交筋の1人は日本政府の動きについて「やっている感は出ていた。おそらく派遣要請を繰り返していた米国に対する時間稼ぎだろう。イランが派遣に反発しないよう根回しする狙いもあっただろう。なかなか巧妙な立ち回りだった」と評価する。

また、派遣のやり方も現在の自衛隊の能力を考えれば、ギリギリの選択だったと言える。イランとオマーンの領海が重なるホルムズ海峡には派遣しなかった。イランとの対決が避けられなくなる可能性が高いし、「調査研究」すら許されない海域との指摘もあったからだ。

ただ、海上自衛隊による護衛を期待する民間船舶会社の要望には最大限応える姿勢は示した。2月に派遣される護衛艦「たかなみ」は、巡航ミサイルを迎撃する能力は持っている。日本の研究者の1人は「テロ行為を想定している以上、1度に飛来するミサイルは1~2発だろう。それなら、たかなみにも迎撃できる」と語る。たかなみの近くにいる民間船舶を狙ったミサイルであっても、たかなみが被弾する可能性もあるとして迎撃できる。
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文=牧野愛博

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