四川省の政府は、成都市郊外に博物館や作家の拠点、国立科学・イノベーションセンターやSFテーマパークなどを備えた「サイエンスフィクション(SF)の街」を建設するため、四川科学技術協会を通じて約18億ドル(約2000億円)を割り当てている。
このプロジェクトは、成都市を拠点とするSF誌「科幻世界(Science Fiction World)」が過去40年で培ってきた中国のSFコミュニティー中心地としての成都の伝統を生かしたものだ。同市はまた、2023年の世界SF大会開催地に立候補し、国際的な知名度を高めようとしている。
起業熱が高まっていることで知られる成都だが、中国のテック系大手も同市での存在を強化し始めている。中国最大のテック企業であり、大人気のアプリ「WeChat(ウィーチャット)」を所有するテンセントは、同市の高度技術区にモバイルゲームとアプリに注力する研究開発センターを建設した。
中国の中央政府が、インフラ開発を目指す広域経済圏構想「一帯一路」の主要な中心地として重慶や西安に加え成都を指定し、商品を積んで同市から欧州へと出発する列車コンテナ1つにつき高額な補助金を与えているいることも追い風となっている。その一方で成都では、北京での制約の多くがそれほど厳密に適用されない。これは中国の古いことわざである「山高く、皇帝遠し」と合致するものだ。
同市を拠点とする教育コンサルタントの姜学勤は「成都は非常に有機的で活力のある場所」と述べている。「成都は人々を受け入れ、一定の制約の中で人々が望むことを何でもさせてくれる」。姜は、成都や中国東部の杭州、南部の深センの3つの都市では今後数年で、創造的な教育が発展を遂げると考えている。
姜がこのような予想をし、成都が中国西部における創造性の中心になることを目指す中、中国では一般的な風潮として抑圧が強化され、市民の自由が踏みにじられている。中国政府は反対意見を抑圧し、大学で社会主義教育を拡大し、公式なナラティブに従わない書籍を公立図書館から排除することを指示している。
北京の一流大学の上の階層では創造性の概念自体が再解釈され、政府が課す制限内でのイノベーションを意味するようになっているとする情報筋もある。こうした中で、成都などの政府や市民の目標はなかなか達成しづらいものになるだろう。