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2020.01.24 18:00

乳がん告知。がっつり生きよう。もっともっともっと|乳がんという「転機」#6

北風祐子さん(写真=小田駿一)

北風祐子さん(写真=小田駿一)

新卒で入った会社で25年間働き続け、仕事、育児、家事と突っ走ってきて、「働き方改革」のさなかに乳がんに倒れた中間管理職の連載「乳がんという『転機』」6回目。
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「仕事より人生が大事。仕事の穴は私が埋めます」同僚の言葉


2017年3月30日。不在の間、私の仕事を担当してくれることになる同僚TKにも、現状報告した。部員と同じくらい迷惑をかけてしまう。私の話を聴き終わると、彼は、開口一番、「仕事より人生が大事。北風さんの人生の代わりはいない。仕事の穴は私が埋めます」と言ってくれた。

仕事より人生が大事なんてあたりまえだよ、と一瞬思った。が、実は、人生が一度きりであること、その重みについて、ちゃんと考えたことがなかったのかもしれないと思い直した。ちゃんと考えていたら、いい年をして息を切らしながら社内を走り回ったりしなかったはずだ。

TKは、その後、私がもう大丈夫と言うまで、何も言わず、ずっと穴を埋めてくれた。私は、TKを会社での恩人リストに加えた。しばらくしてTKは昇進したが、僭越ながら、私としては、非常に納得のいく人事だった。
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「麻酔医との決戦」


2017年4月7日。友人の智子とよく3人で会っていたノブとごはんを食べに行った。これで最後というつもりはなかったが、昔からの友達にはできるだけ会っておきたかった。智子のおかげで毎年検査をしていたから早期発見できた。でも、今はとにかく手術の全身麻酔が怖くてしかたがない、と話すと、ノブは全身麻酔経験者として語りだした。

ノブが手術するときも、やはり全身麻酔が怖かったという。が、事前に経験者の友達に会ったら、このように言われたそうだ。

「お前、知ってるか? 麻酔医は、患者の体格に合わせて最適な麻酔薬の量を決めている。本番で、自分の予想通りの秒数で患者が眠りに落ちると“よし!”とガッツポーズをして喜んでいるんだよ。だから、俺は麻酔医をがっかりさせるために、できるだけ長い間目を開けるように粘って、数をたくさん数えるようにがんばったんだ、お前もやってみろ」と。

それで、自分も手術台に横たわったときに、その友達同様に麻酔医との決戦だと思って数を数えた。実際は1、2、3まで数えられたかどうか覚えてないくらいで寝落ちしてしまったそうだ。ばかばかしいけど、私もまねしてみよう、と思った。ノブ、ありがとう。

全身麻酔が怖いのは、ゆだねることに慣れていないからだ。自力本願すぎるから。たいした自力じゃないのに、自力を過信しすぎ。きっと、もっと人に頼ればいいのだ。

乳がんと診断されたらすぐに読みたい本
この本には「手術はよくなるための通過点。憶するな! 体感時間はたった5分」と書いてあった。5分という具体的な時間を提示してくれているおかげで、手術の感覚を少し想像することができて、気持ちが楽になった。『乳がんと診断されたらすぐに読みたい本 私たち100人の乳がん体験記』豊増さくらと乳がん患者会bambi組(2014年、エッセンシャル出版社)
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文=北風祐子、写真=小田駿一、サムネイルデザイン=高田尚弥

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乳がんという「転機」

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