ニューヨークで「キャッシュレス禁止法」可決、米国で3例目

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ニューヨーク市議会は1月23日、小売店やレストランが現金による支払いを拒否することを禁じる法案を可決した。この法案は「キャッスレス禁止法」とも呼ばれ、ニューヨークは米国で3番目にこの種のルールを設ける都市となった。

米国では銀行口座やクレジットカードを持たない低所得者層の人々が、地域経済から排除されるケースを減らそうとする動きが起きている。

ニューヨーク市でこの法案に違反した店舗は初犯の場合、1000ドルの罰金を科される。さらに、2回目以降の罰金は1500ドルに跳ね上がる。ただし、利用者が手数料無料で代金をカードにチャージして支払いを行うコインランドリーなどは、この法律の適用外とされる。

法案の成立にはビル・デブラシオ市長のサインが必要となるが、広報担当者によると市長はこの法案の趣旨に同意しており、改めて内容を精査した後、署名を行う予定という。

キャッシュレス化は米国において、“アンダー・バンクト(underbanked)”と呼ばれる銀行口座やクレジットカードを持たない人々の不利益につながると、以前から指摘されてきた。それに対し、キャッシュレスに賛同する店舗は現金を扱う手間から解放される点や、防犯上のメリットを訴えていた。

2015年のニューヨーク市による調査では、ニューヨーク市民の12%が銀行口座を持っていなかった。これは全米平均の8%を上回る数値とされた。

法案の発起人のニューヨーク市会議員のRichie Torresは「この法案により、全てのニューヨーク市民が経済活動への参加を保証される」と23日の記者会見で述べた。一方で、全米小売業協会はニューヨーク・タイムズ(NYT)の取材に対し、「小売店のオーナーたちはキャッシュレスが前向きな結果をもたらすかどうかを、自分で判断すべきだ」と述べた。

ニューヨーク市会議員のTorresが最初にキャッシュレス禁止法案の導入を呼びかけたのは2018年のことだった。その後、キャッシュレス化の是非を問う議論が全米で巻き起こり、サンフランシスコ市とフィラデルフィア市は、2019年にニューヨークと同様の法律を制定した。さらに、ニュージャージー州は州全体でキャッシュレス禁止法を導入した。

一方で、連邦準備銀行(FRB)の2018年の調査では、米国で最も人気の決済手段は現金ではなく、デビットカードであるとされていた。

編集=上田裕資

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