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2020.01.26 18:00

【独占】「世界最高の経営思想家」ジム・コリンズが日本の起業家に贈る言葉

米コロラド州ポルダーにマネジメント研究所を構えるジム・コリンズ。最新作は『ビジョナリー・カンパニー 弾み車の法則』

米コロラド州ポルダーにマネジメント研究所を構えるジム・コリンズ。最新作は『ビジョナリー・カンパニー 弾み車の法則』

『ビジョナリー・カンパニー』シリーズが累計1000万部を売り上げている世界的作家、ジム・コリンズ。徹底したデータ主義と歴史学的なアプローチにもとづく言説は、時代を超えて支持されてきた。取材に応じることが少ない彼が、Forbes JAPANだけにたっぷり語ったこととは──。

1月24日(金)発売のフォーブス ジャパン 2020年3月号に掲載するロングインタビューの一部を、特別に公開します。


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ジム・コリンズ(61)は滅多にインタビューに応じない。その理由は、彼のオフィス内のホワイトボードを見れば分かる。左上に書かれた「ジムの創造的な20マイル行進:365日合計1339マイル」というメモ。これは、「変化する世界でも成功する会社は、(天候にかかわらず毎日少なくとも20マイルは行進する冒険家のように)自らに厳格なパフォーマンス目標を課し、しかも必ず達成し続ける」という「20マイル行進」なるコンセプトに由来する。

人呼んで“世界最高の経営思想家”。コリンズは、『ビジョナリー・カンパニー1 時代を超える生存の法則』(日経BP刊)をはじめとする著書は、世界各国で累計1000万部以上を売り上げてきた。

調査と研究、思索、そして執筆の時間が惜しい──。米コロラド州ボルダーにマネジメント研究所「Good to Great The Project」を構える彼は、秘書に細かくスケジュールを組んでもらい、「創造的な20マイル行進」のための時間を少しでも多く捻出しようとしている。それがなぜ、Forbes JAPANの独占インタビューに応じたのか。

コリンズはスタンフォード大学経営大学院に在籍していた30歳のとき、ウィリアム・ラジアー教授からMBAプログラムの「ビジネス352」という講義を預かっている。前年度のシラバスには、「本講義では、小規模事業、及びベンチャー企業の立ち上げについて学ぶ」とだけ書かれていた。それを見たコリンズは、無意識にこう書き換えたという。

“本講義では、ベンチャー企業や小規模事業を永続的で偉大な企業に育てる方法を学ぶ”

彼は「なぜ書き換えたか、今でもわからない」と笑う。

「これは面白い“問い”になると思ったよ。もちろん、答えはわからなかった。でも、小さな会社がどのようにして大企業に成長したのか。そうなれなかった競合との違いは何か。これは『起業家の問い』だと思ったんだ」

Forbes JAPANは創刊以来、数々の国内外の起業家とスタートアップ、エコシステム(生態系)の誕生と成長を見てきた。どうすればソニーやホンダといった会社は生まれるのか。起業家たちが道に迷ったとき、道標となる“北極星”をどう探り当てればいいのか──。コリンズはその想いに共鳴したのだ。

講義のテーマは、コリンズから学生たちへの挑戦状だった。君たちは短い栄光と永続的な成功、そのどちらを選ぶか? それは同時に、コリンズ自身の知的チャレンジでもあった。スタートアップはいかに偉大な企業になるのか。その秘密を一つひとつ解いていった結果、生まれたのが『ビジョナリー・カンパニー』シリーズである。

コリンズは自分が「プロの歴史家ではない」と認める。それでも研究に歴史学的なアプローチを採るのには理由がある。

「歴史家が特に優れているのは、『時代の捉え方』だ。彼らは、当時の背景や考え方を理解しようとする。結論だけに着目すると、それに寄与した要素を見落としかねない。例えば、なぜビル・ゲイツとポール・アレンは1975年当時、プログラミング言語やOS(基本ソフト)に特化しようと考えたのか。決断を下した理由や背景を理解しなければ、彼らが成功できた本当の理由はわからない。どのように成長したかを理解する必要がある。すべては『進化』なんだ」

実際、コリンズはその「進化」の瞬間を目の当たりにしている。アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズである。
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文=井関庸介 写真=ジョン・ローズ

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