1月24日(金)発売のフォーブス ジャパン 2020年3月号に掲載するロングインタビューの一部を、特別に公開します。
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ジム・コリンズ(61)は滅多にインタビューに応じない。その理由は、彼のオフィス内のホワイトボードを見れば分かる。左上に書かれた「ジムの創造的な20マイル行進:365日合計1339マイル」というメモ。これは、「変化する世界でも成功する会社は、(天候にかかわらず毎日少なくとも20マイルは行進する冒険家のように)自らに厳格なパフォーマンス目標を課し、しかも必ず達成し続ける」という「20マイル行進」なるコンセプトに由来する。
人呼んで“世界最高の経営思想家”。コリンズは、『ビジョナリー・カンパニー1 時代を超える生存の法則』(日経BP刊)をはじめとする著書は、世界各国で累計1000万部以上を売り上げてきた。
調査と研究、思索、そして執筆の時間が惜しい──。米コロラド州ボルダーにマネジメント研究所「Good to Great The Project」を構える彼は、秘書に細かくスケジュールを組んでもらい、「創造的な20マイル行進」のための時間を少しでも多く捻出しようとしている。それがなぜ、Forbes JAPANの独占インタビューに応じたのか。
コリンズはスタンフォード大学経営大学院に在籍していた30歳のとき、ウィリアム・ラジアー教授からMBAプログラムの「ビジネス352」という講義を預かっている。前年度のシラバスには、「本講義では、小規模事業、及びベンチャー企業の立ち上げについて学ぶ」とだけ書かれていた。それを見たコリンズは、無意識にこう書き換えたという。
“本講義では、ベンチャー企業や小規模事業を永続的で偉大な企業に育てる方法を学ぶ”
彼は「なぜ書き換えたか、今でもわからない」と笑う。
「これは面白い“問い”になると思ったよ。もちろん、答えはわからなかった。でも、小さな会社がどのようにして大企業に成長したのか。そうなれなかった競合との違いは何か。これは『起業家の問い』だと思ったんだ」
Forbes JAPANは創刊以来、数々の国内外の起業家とスタートアップ、エコシステム(生態系)の誕生と成長を見てきた。どうすればソニーやホンダといった会社は生まれるのか。起業家たちが道に迷ったとき、道標となる“北極星”をどう探り当てればいいのか──。コリンズはその想いに共鳴したのだ。
講義のテーマは、コリンズから学生たちへの挑戦状だった。君たちは短い栄光と永続的な成功、そのどちらを選ぶか? それは同時に、コリンズ自身の知的チャレンジでもあった。スタートアップはいかに偉大な企業になるのか。その秘密を一つひとつ解いていった結果、生まれたのが『ビジョナリー・カンパニー』シリーズである。
コリンズは自分が「プロの歴史家ではない」と認める。それでも研究に歴史学的なアプローチを採るのには理由がある。
「歴史家が特に優れているのは、『時代の捉え方』だ。彼らは、当時の背景や考え方を理解しようとする。結論だけに着目すると、それに寄与した要素を見落としかねない。例えば、なぜビル・ゲイツとポール・アレンは1975年当時、プログラミング言語やOS(基本ソフト)に特化しようと考えたのか。決断を下した理由や背景を理解しなければ、彼らが成功できた本当の理由はわからない。どのように成長したかを理解する必要がある。すべては『進化』なんだ」
実際、コリンズはその「進化」の瞬間を目の当たりにしている。アップル共同創業者のスティーブ・ジョブズである。