英国が導入狙う「インターネット児童保護法」が危険な理由

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英国政府は子供のプライバシーを守るための新たな規則、「年齢適正デザインコード(Age Appropriate Design Code)」を導入しようとしている。大手のテック企業が規則に従わない場合、巨額の罰金支払いに直面する可能性がある。

この規則は子供がアクセスする可能性のあるアプリやソーシャルメディア、ストリーミングサイト、ネット接続可能な玩具まで、あらゆるネットを用いたサービスを対象とする。サービスの運営者は、プライバシー設定をデフォルト状態で高度なレベルにしておくことを求められ、子供らに抜け道を与えてはならない。

子供を対象としたターゲット広告の配信は許されず、位置情報の収集もオフにしておくことが必須となる。運営者はサービス利用者の年齢を把握しておくべきとされる。

「現代の子供たちは自転車の乗り方を覚える前にiPadに触れている。オンラインサービスを運営する企業は、その現実をふまえてサービスの設計を行うべきだ。子供のプライバシーが利益追求の道具にされてはならない」と、この規則の策定を行った英国の個人情報保護監督機関、情報コミッショナーオフィス(ICO)のエリザベス・デンハムは述べた。

今回の規則はEUのGDPR(一般データ保護規則)や2018年のデータ保護法をベースに策定されたもので、今年の秋に英国議会で審議される見通しだ。法案が成立した場合、企業らは12カ月間の猶予期間内に、新基準を満たすことを求められる。

規則に違反した企業は最大で1700万ポンド(約25億円)の罰金もしくは、世界の総売上の4%の支払いを求められる。

「企業側もこのような基準を求めているはずだ。なぜなら、ビジネスを運営する上で子供たちを守る姿勢を打ち出すことはメリットとなるからだ。基準を守らない企業は法的リスクに直面するだけでなく、競合企業から取り残されることになる」とデンハムは述べた。

年齢認証が「表現の自由を奪う危険性」

しかし、一部からは反発の声もあがる。小規模な企業にとってシステムの改修は大きな負担になり得るし、利用者の年齢を把握する義務も生じる。デジタルの権利と自由の保護を推進する団体のOpen Rights Groupも、基本的にはこの規則を歓迎しているが、様々なサービスに年齢認証が義務づけられることには懸念を示している。

「ICOはこの規則が成人のインターネット利用に与える影響を十分に考慮していない。年齢認証が全てのサイトに義務づけられた場合、ニュースやソーシャルメディアなどの合法的コンテンツへのアクセスにも制限がかかる危険がある。これは表現の自由を脅かす事態だ」とOpen Rights Groupの代表者は話した。

一方で、フェイスブックは今回の規則の基本理念に賛同する声明を発表した。

「若年層を危険から守ることはフェイスブックが最も重視していることであり、これまで10年以上をかけて、人々の安全を高めるためのツールを導入してきた。最近ではインスタグラムのダイレクトメッセージに加えたアップデートが、その一例にあげられる」とフェイスブックは述べた。

「当社は政府や外部のテクノロジー企業と連携をとりつつ、若年層を危険から守るソリューションの導入を進めていく」とフェイスブックは続けた。

編集=上田裕資

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