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岡田光信(右)と田村 淳(左)

The MACALLAN × Forbes JAPAN
The Greedy Talk ~成功の先を目指す貪欲な挑戦者~

<対談第3回>
岡田光信 アストロスケールホールディングス 創業者/CEO
田村 淳 ロンドンブーツ1号2号

「MAKE THE CALL」―リスクを恐れず、大胆な決断で成功を勝ち取る―という信念をもつ、シングルモルトウイスキーのザ・マッカランとForbes JAPANが創設した「The Greats of Greed Award」。さらなる成功を目指し貪欲に挑戦するCEO4名が選ばれた。このAwardのアンバサダーには田村淳が就任。田村淳が紐解く、CEO達の挑戦し続けるための原動力とは。


東京副都心の夜景を広大に見下ろすスイートルームにて、ザ・マッカランの芳醇な香りとともに交わされる特別な会話。田村淳が迎え入れたゲストは、宇宙ゴミ(スペースデブリ)除去を目的とした世界唯一の宇宙ベンチャー、アストロスケールを起こした岡田光信だ。

宇宙開発に障害があれば、それは地球上の問題へ直結する

田村 淳(以下、田村) 夜空を見上げても見えるわけではないし、想像もつかない。そんな宇宙ゴミの除去を目的に会社を立ち上げるとは、とても考えつかないのですが。

岡田光信(以下、岡田) でも実際は宇宙の問題は地球の問題に直結するのですよ。昨今、宇宙関連産業が活発化したために、人工衛星の数は飛躍的に増え続けています。それに伴って発生しているのが、不要になった人工衛星やロケットの破片などの宇宙ゴミ=スペースデブリです。宇宙開発の際にそれらは大きな障害になっています。

地球上ではいま、持続可能な開発目標=SDGsが注目されていますが、その前に宇宙を持続可能な状態にしなければ、近い将来に大きな問題が起きるのです。

田村 どのような問題が起きるのでしょう?

岡田 衛星放送はもちろん、天気予報や災害対策も人工衛星抜きでは考えられません。さらにクルマなどのGPSシステムも衛星頼りです。そこに障害が起きるということは、そのまま地球に重大な影響を与えかねません。

田村 それでスペースデブリを除去するための、世界唯一の企業を立ち上げたわけですね。ただそのためには相当なパワーが必要だったと思うのですが……。原動力はどのあたりにあるのでしょうか?


起業するときに誓った「誰にもいいわけをしない」という決意

岡田 今回起業するにあたって特に心に誓ったのは、誰にも言い訳しないという決意。この事業は非常に理解されにくいものですから、覚悟が必要でした。

この事業を進めるにあたっての問題は、大きく3つ。1つめは技術。2つめはビジネスモデル、3つめは法規制です。会社を立ち上げるにあたって、最初から困難は予想できていました。だから何があっても言い訳をしないということを決めたのです。ついついうまくいかないことがあると、社会が悪い、営業先が理解してくれない、政府の考えが硬すぎると他人のせいにしたくなると思うのです。でもそれでは前に進めることはできないのですよね。

田村 事業内容が内容だけに、社員の方々も不安を感じるのではないでしょうか。強い光で行先を照らすリーダーがいないと無理なのでは?

岡田 いや、そんなことはありません。皆それぞれ、愚痴を言っている時間があったら、トライ&エラーで問題解決のために努力し続けるタイプの人間が集まっているので。宇宙ゴミは喫緊の問題でもありますし。だからこそJAXAやNASAを辞めてまで入社してくる社員がいる。宇宙業界ではこの問題は非常に切実なものなのです。



努力の継続は容易なものではない。しかし、ザ・マッカランはそれを約190年もの間、高いレベルで行い続けている。例えば、戦時中に多くの社員が入隊して人員を欠いてしまった苦しい状況下でも、ザ・マッカランは決して品質を落とさず、これまでと変わらないウイスキーづくりを諦めなかった。熱い職人たちは、決して誰かのせいにして逃げることなく、努力を継続してきたのだ。

人工衛星の打ち上げを失敗してもなお、背中を押す人々がいた

田村 事業を続けるなか、心が折れそうなときもあったと思うのですが、どのように立ち直ってきたのでしょうか。

岡田 今までで一番大変だったのは、約2年前、初めての人工衛星の打ち上げに失敗したときでした。ロシアの山奥で打ち上げられた機体が宇宙空間で故障して、帰還を余儀なくされたのです。打ち上げというものは20回に1回は失敗する。頭ではわかっていても心は折れそうでした。そしてそれ以上に心配だったのが、チームのことです。すぐさま帰国して、息を切らしてオフィスに駆け込みました。ところが彼らは、むしろ私のことを心配していて……。

すでに彼らは今回の失敗をもとに、次の計画を練り始めていました。しかも投資家に対する説明準備まで済ませていたのです。このことからも、リーダーがカリスマ的に引っ張っていく会社でないことはわかるのではないでしょうか。



田村 素晴らしいチームですね。

岡田 さらに驚いたのは、その後の資金調達で多額の資金が集まったことです。

田村 なるほど、失敗を糧にして、再び立ち上がるチームだと信じられていたのですね。

岡田 大きな力で背中をドンと押されたような、そんな気持ちでした。


酌み交わすグラスには、伝統とともに革新を恐れないスピリットが注がれている

田村 このシングルモルトのロールスロイスと称されるザ・マッカラン。190年続く伝統を大切にしながらも、まだできることがあると新しい革新的な蒸溜所をつくり、挑戦をし続けている姿勢が、このおいしさに繋がっていると思うのです。

岡田 はい、そう思います。これまでに積み上げてきた豊富な知識や経験をもちながら、さらにその先を目指して革新を続ける姿勢には、大いに共鳴しますね。私も、宇宙ビジネスを手がける際、それまでの考えうるすべての技術を学びました。その上で今できることは何なのかを考えたのです。

田村 すべての宇宙技術を学ぶなんて、そう簡単にできることではないでしょう。

岡田 でもやらなくてはできないことがある。あらゆる技術をまとめ上げて突き当たったスペースデブリという問題を解決するための、私はオーケストラで言えば指揮者にならなくてはならなかったのですから。それぞれの楽器のことを深く知るのは大切なことです。そして何より過去へ思いを馳せることこそ、未来を描くために不可欠だと私は考えます。

田村 そんな思いを馳せるときに、ザ・マッカランはぴったりかもしれませんね。

岡田 そうです。この香りと味が、時を経ても変わらないものに気づかせてくれるのです。一人で考えを巡らせたいときに、これほど適したウイスキーはないと思います。

田村 物事を深く考えるときのトリガーとして機能する?

岡田 そうです。そうして心を整えたときにこそ、現実を書き換えるフェーズに入ることができるのです。



ザ・マッカランが新たな蒸溜所を建設した際にも、守り続けた伝統の一つに、ポットスチル(蒸溜釜)がある。スコッチウイスキー業界の中でも最も小さいと言われるザ・マッカランのポットスチルは、生産効率は下がるものの、密度の高い良質な原酒を生成する。革新は、このような過去からの知恵と、それを守り続ける努力の上に成り立っている。岡田もまた、宇宙の過去と未来に想いを馳せながら、今夜もグラスを傾けるのだろう。




岡田光信(おかだ・みつのぶ)◎1973年兵庫県生まれ。東京大学農学部卒業。米国でMBAを取得後、大蔵省(現財務省)、マッキンゼー・アンド・カンパニー経て、IT事業で2社を起業。2013年突如宇宙ビジネスに踏み出し、宇宙ゴミ(スペースデブリ)除去を目的 とした宇宙ベンチャー、アストロスケールを起業した。

「The Greedy Talk~成功の先を目指す貪欲な挑戦者~」特設サイト
https://forbesjapan.com/feat/macallan/

田村淳が「The Greats of Greed Award」を受賞した4名のCEOに成功を求めて挑戦を続ける原動力を聞く「The Greedy Talk~成功の先を目指す貪欲な挑戦者~」。各回は以下の通り。

第1回 | dely株式会社 代表取締役/CEO 堀江裕介
第2回 | BASE株式会社 代表取締役CEO 鶴岡裕太
本記事 |株式会社アストロスケールホールディングス 創業者 兼 CEO 岡田光信
第4回 |ラクスル株式会社 代表取締役社長CEO 松本恭攝

Promoted by Suntory Spirits / text by Ryoichi Shimizu / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro

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