米国のエネルギー安全保障、必要なのは隣国との連携強化

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アメリカはいま、かつてないほどの量の原油を生産している。それどころか、生産量はどの国よりも多く、世界一だ。ほかにも、天然ガスや石炭に加え、太陽光や風力、水力、原子力によるエネルギーも生産している。ごくわずかだが、バイオ燃料をはじめとした小規模なエネルギー源もある。にもかかわらず、アメリカはエネルギー自給国ではない。

エネルギーは本来、世界的に取引されるものだ。私たちのせめてもの願いは、エネルギーの安全保障、すなわち、敵対勢力が現れてエネルギーの十分な供給が阻止されることのない安心できる状態である。

エネルギーが豊富にあるとはいえ自給できていないアメリカがエネルギーの安全保障を実現しようとする場合、その最善の道は、北米大陸の隣国と提携することだ。こうした提携は、カナダとメキシコにとっても好ましいだろう。

こうしたエネルギー提携で得られる経済的・環境的・戦略的な利点については、2020年1月初めに報じられた2つのニュースで浮き彫りにされた。

ひとつめは、米メイン州の電力会社セントラル・メイン・パワー(Central Maine Power Co.)が、カナダのケベック州にあるダム(水力発電所)からマサチューセッツ州に電力を送る大規模な送電線建設プロジェクトを進めているというニュースだ。

実現すれば、米北東部ニューイングランド地方で最大の人口を擁するマサチューセッツ州に供給される電力量は1200メガワットに上る。これは、新型原子力発電所1つ分のエネルギー生産量に相当する量だ。それがわずかなコストで叶い、原発事故が起きる危険性も回避できる。

水力発電は、クリーンエネルギーによる発電のなかで最も効果的な方法だ。メイン州が建設を許可すれば、このプロジェクトはニューイングランド地方にきわめて大きな経済的・環境的メリットをもたらすことになる。ケベック州も同様に経済的利益を得られるだろう。

アメリカ北部とカナダにはかなり密接な配電網が張り巡らされている。それが最もよくわかるのは、停電が発生したときだ。2003年夏に起きた大規模停電は当初、オハイオ州の送電線に木の枝が接触したのが原因だった。ところが、最終的にはマサチューセッツ州からミシガン州、北はカナダのオンタリオ州まで、その影響が及んだ。

供給網が相互に連結しているのは、一般的にいえば有益なことだ。負荷を分かち合い、助け合って供給できるからだ。たとえば、アメリカは天然ガスをカナダに送っている。ニューイングランド地方への供給パイプラインが、国境を越えてカナダまで伸びているのだ。また、カナダ産の原油はアメリカに送られ、精製されている一方で、カナダはアメリカの原油を輸入する最大の国でもある。このシステムは互いに入り組み、ひとつのものとして機能している。これは、供給者にとっても消費者にとっても好ましい状態だ。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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