ビジネス

2020.01.24 08:00

中国最大のフィンテック企業「アント」が次に狙う巨大市場


一部の大手銀行はアントを危険視

アントが手がける投資商品「余額宝(Yu’e Bao)」の加入者は6億人を超え、1500億ドルを運用する世界最大のMMF(マネー・マーケット・ファンド)に成長した。2014年に中国の国営テレビは、「余額宝が吸血鬼のように金を吸い上げている」と批判した。

中国政府はアントの覇権の高まりをリスクとみなすようになり、同社の消費者向けビジネスに様々な規制を設けた。その結果、アントの成長は減速した。

さらにアントは競合のテンセントらと共に、中国の中央銀行から決済の透明化を迫られ、資金流入額に制限を加えられた。中国政府は大手のフィンテック企業5社に対し、商業銀行と同水準の厳格なリスク管理や資本準備金の要件を、求めようとしている。

アナリストの間からは、アントは銀行向けのサービス強化にあたっても、様々な課題に直面するとの声があがる。国内の景気減速に直面する銀行は、アントとの取り組みで運営コストを引き下げられる点に魅力を感じているが、保守的な大手銀行はアントにビジネスを奪われることを危惧している。

しかし、Jiangはアントの信頼性の高いテクノロジーは、いずれ大手の銀行にも受け入れられると楽観的な見通しを語った。中でも期待を注げるのがブロックチェーン技術だという。デジタル通貨の導入により銀行は取引の安全性を高め、決済コストを抑えられる。

「当社が提供するテクノロジーで、銀行は新たなプロダクトを開発し、お互いにメリットのある関係を構築できる。アントと銀行が手を組むことで、より充実した金融サービスが可能になる」と、Jiangは続けた。

編集=上田裕資

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