中国の新型肺炎「感染者数を過少申告」の疑い、英機関調査

中国政府は、これまで17人が死亡したと述べている(Photo by Stringer/Anadolu Agency via Getty Images)

英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンの公衆衛生の研究者らの試算によると、新型コロナウイルスに感染した中国の患者数は、これまで報告された件数をはるかに上回っているという。中国政府は過去に、国内で発生した疫病の被害を実際よりも少なく報告していた。

インペリアル・カレッジの疾病モデリングの専門チームは、1月22日の最新レポートで、実際の感染者数が中国の武漢市だけで4000人に達したと推定し、最悪のシナリオとして9700人まで拡大した可能性もあると述べた。

中国政府は、これまで500人近くが感染し、17人が死亡したと述べている。SARSに似た謎めいた疫病の感染は現在、米国を含む海外の5カ国に拡大している。

中国政府は22日、900万人近くが暮らす武漢市の公共交通の遮断を決定した。香港メディアの「サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SMCP)」によると、中国政府は実際の感染者数を隠蔽しているとの噂を否定したが、多くの専門家が政府の発表に懐疑的だという。

中国は疾病の被害を過小申告した過去がある。2002年のSARSの大流行を政府は隠蔽しようとしたが、結果的に約8000人が感染し、800人近くが亡くなっていた。

今回の疾病に絡む、パニックの広がりも報告されている。ソーシャルメディア上では不安を訴える人々の投稿が相次いでおり、一部の現地ジャーナリストは新型肺炎に関わる報道をやめるよう要請されたという。

さらに、ワシントン・ポストの報道によると、新型肺炎が原因とみられる一部の死者数が、政府の公式な統計に含まれていないとの報告も相次いでいるという。

イェール大学医学大学院のJames Shepherd博士は「インペリアル・カレッジの試算は、疾病のモデリングをベースとしたもので、新たな情報が入手でき次第、アップデートされている。実際の件数は試算より上かもしれないし、下かもしれない」と述べた。

「私の見解では、中国は過去のSARSの大流行から一定の教訓を得たように思える」と、Shepherd博士は述べ、政府が今回の疾病に関して以前よりも素早い対応を行ったと指摘した。中国政府は新型ウィルスのDNA解析に基づく診断法を迅速に開発し、海外や国際的機関とも連携をとっていると博士は述べた。

政治的混乱に発展の可能性

武漢市での最初のコロナウイルス感染を中国メデイアが報じたのは12月8日だったが、中国政府は正式な発表を遅らせた模様だ。政府が正式な通達を出したのは12月31日になってからで、死者の発生を伝えたのは1月12日だったが、これは患者が死亡した数日後だった。さらに、武漢市の外部への感染拡大を認めたのは1月20日だったが、その時点で既に海外での感染が確認されていた。

新型コロナウイルスの大流行は、習近平国家主席や中国共産党にとって極めてセンシティブな事態であり、政治的問題に発展する恐れもある。謎めいたウィルスの急激な拡散は、非常にまずいタイミングで起きた。中国は食料価格の高騰や景気の減速、さらには米国との貿易対立や香港での民主化デモなど、様々な困難に直面している。

編集=上田裕資

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