1月9日の発表によると、両社が結んだ「仮想電力購入契約(VPPA)」と呼ばれる契約では、BayWaがスペインに建設する出力計約20万キロワットの太陽光発電所2カ所から電力が供給されることになる。ただ、これらの太陽光発電所が稼働を始める(2022年3月ごろ)までは、同社が同じくスペインに持つ風力発電所から電力を供給する。対象となるABインベブの醸造所では主力の「バドワイザー」を含む50余りのブランドが生産されている。
ABインベブは「2025年持続可能性目標」のひとつとして、25年までに購入電力をすべて再生可能エネルギーに切り替える目標を掲げており、今回の契約もその一環だ。欧州社長のジェーソン・ワーナーは「醸造業者として、私たちは自分たちのビール造るうえでホップや大麦、酵母といった天然の素材に頼っています。ですから、持続可能性は当社のビジネスの一部というよりも、むしろ当社のビジネスそのものだと認識しています」と述べている。
ABインベブは欧州で年間5500万たるを超えるビール生産している。19年にフランスとオランダでも発売したバドワイザーは、欧州で同社のベストセラーとなっており、域内の生産量は瓶ビールだけで週におよそ500万本にのぼる。
西欧でのバドワイザー生産に使う電力がすべて再生可能エネルギーになり次第、ABインベブはそれを示すマークをバドワイザーのラベルに付ける方針だ。再生可能エネルギーで造ったビールだとアピールし、消費者に選んでもらう狙いがある。ワーナーによると、同社はこのマークをほかのメーカーも使えるようにし、同様の取り組みを広げていきたい考えだ。
「欧州グリーンニューディール」にも貢献
ABインベブは持続可能性目標の実現に向けて、英国やロシア、メキシコ、米国、オーストラリア、中国、インドの事業で再生可能エネルギーへの移行を進めている。この取り組みを通じて、同社は消費財業界で最大の再生可能エネルギー購入企業になるとみられる。
BayWaの出資でスペインに建設される太陽光発電所の一つは「バドワイザー・ソーラーファーム」と名づけられ、年間250ギガ(ギガは10億)ワット時の電力をABインベブの醸造所に供給する予定。生産量は一般家庭約67万世帯の年間消費電力に相当する。