シネマの女は最後に微笑む

『マイ・プレシャス・リスト』主演のベル・パウリー(Photo by Nicholas Hunt/Getty Images)

先週末、約55万人の高校生や浪人生がセンター試験を受けた。もちろんほぼ全員が18歳以上。

大学への早期入学は、特定の分野について特に優れた資質を有する者については18歳未満でも入学ができるとされている。例えばスキージャンプ女子の高梨沙羅選手は、17歳で日本体育大学に入学した。だがこの制度を採用している大学はわずかであり、高校以下の学校における飛び級は「平等主義」の観点から基本的には認められていない。

一方、海外で飛び級は珍しくない。最近衆目を集めたのは、オランダ在住のベルギー人、ローラン・シモンズ君だ。昨年末、オランダのアイントホーフェン工科大学を世界最年少の9歳で卒業見込みだったが、中退したというニュースがあった。大学側が当初予定になかった複数の試験を受けるよう求めたのに対し、受ければ10歳となる来年半ばに卒業がずれ込むため、拒否したとのこと。いずれにしても、驚異的な若さでアメリカの大学院に進学するものと見られている。

幼少時からずば抜けて高い知的能力を示し、飛び級で大学進学する天才児。しかしその中には、途中で目的を見失ったり孤立したりする者も少なくないという。自分と周囲との違いを意識すればするほど、普通の人にはわからない孤独感に襲われることもあるということなのだろう。

『マイ・プレシャス・リスト』(スーザン・ジョンソン監督、2016)は、そんな元天才児の一人の若い女性を主人公にしたコメディである。

感謝祭のニューヨーク、マンハッタン。キャリー(ベル・パウリー)は、セラピストのペトロフ先生の部屋に来るなり、父への不満を早口でまくし立てる。彼女の母は早くに亡くなっており、感謝祭に来る予定だったロンドン住まいの父からドタキャンされたのだ。

IQ185で、3年飛び級して14歳でハーバード大学に入学し、優秀な成績で卒業したのに、道を見失っているキャリー。冒頭のやりとりで、目から鼻に抜けるような彼女の頭の良さの影に、プライドが高いあまりに批判に傾き、理が勝ち過ぎて知識をひけらかす性向が垣間見える。

仕事もせず友達もおらず、かといってずっと孤独に耐えていけるほどの精神力もない。カフェで仲の良いカップルを見ているのが辛くなって、オーダーしたスープをお持ち帰りにし、アパートに引きこもる非コミュの毎日だ。

幸せになるための六つの課題

ペトロフはそんなキャリーに、デートをする、友達を作る、ペットを飼う、子供の頃好きだったことをする、お気に入りの本を読む、大晦日を誰かと過ごすという、6つの課題を年内にクリアするよう提案。それが幸せになる道だと諭す。

父親世代のペトロフは、キャリーのもう一人の父と言っていいだろう。彼は今の彼女に必要なのが「柔軟な心を取り戻し、さまざまな関係性を回復すること」だと見抜いており、キャリーは渋々それらの課題に取り込むことになる。

文=大野 左紀子

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