運用コストを最大60%削減。アマゾン「AWS」はシステム開発をどう変える?

アマゾン ウェブ サービス ジャパン 代表取締役社長 長崎忠雄氏


ソニー銀行のクラウド活用

大阪リージョンの規模拡大は、AWSのパートナー企業からの強い要望を受けてのものだという。ソニー銀行はその1社で、AWS大阪リージョンの開設により勘定系を含むすべてのシステムにAWSの利用範囲を拡大する計画だ。

ソニー銀行は2013年に社内および銀行周辺系システムでAWSの利用を開始、2017年には勘定系の一部である財務会計システムでの採用を決め、2019年秋までに移行/本番稼働を開始している。さらにAWSの利用範囲を全業務に拡げる方針を決定しており、勘定系システムの更改方式を検討しているという。


ソニー銀行におけるAWS導入の効果

大阪リージョンの拡充(ローカルリージョンのフルスペック化)がソニー銀行のシステム開発に影響する理由だが、現在の大阪リージョンはバックアップサイトとしての利用が前提で単一リージョンとしての運用ができなかったこと、災害復旧の要件により東京から地理的に離れた場所にフルスペックのリージョンを必要としたことが挙げられる。

2019年秋時点、ソニー銀行では約50のサービスがAWS上で稼働中。オンプレミス(自社内の設備で運用するシステム)と比較してインフラ導入・構築期間は約半分に短縮、運用コストも最大60%削減できたというが、「仮想サーバーに既存システムを載せるだけではなく、クラウドネイティブなアーキテクチャを使い開発生産性を向上させたい。オンプレミスと比較するとオープンな技術、世界の叡智を活用できる点も利点だ」(ソニー銀行 福嶋氏)と、クラウドの利点を開発期間・コストの圧縮だけでなく、開発手法を含むシステム開発全体の方向性にまで話が及ぶ。


ソニー銀行 執行役員(システム担当) 福嶋達也氏

一般的に銀行のシステムは、金融機関相互間の内国為替取引をオンライン処理する「全銀システム」など、1社ではクラウドへの移行が困難な機能を多く含む。

しかし、クラウドはオンプレミスでの開発と比べ多様性あるシステムを開発でき、ユニークなサービスの実現にもつながる。「銀行固有でない部分はクラウドネイティブにやっていきたい」(福嶋氏)というソニー銀行の方針が、AWS大阪リージョンの拡充を契機としてどのように現実化していくか、今後の動きに注目したい。

文・写真=海上 忍

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