日本発「木のストロー」はトレンドになるか? 国産スギの間伐材を活用

アキュラホームが開発を手がけた、木のストロー

西日本豪雨の現場での気づきから、行動へ

発端は1人のジャーナリストが現場取材から得た、アイデアだった。

ニュースキャスターであり、環境ジャーナリストとして活動する竹田有里は、2018年に起きた西日本豪雨の被災地を取材していた。最も被害が大きかったのは、彼女の生まれ育った故郷である広島県と岡山県だ。とりわけ広島県は最も人的被害が多かった地域であり、その一因は土砂災害によるものだった。

木のストロー発案者の竹田友里とアキュラホーム宮沢社長
「木のストロー」発案者の竹田有里とアキュラホームの宮沢俊哉社長

取材を通して竹田は、土砂災害は人が森林を守っていなかったがための「人災」であることに気づく。高齢化や人口減少問題を抱えた地域で、間伐など適切な森林管理が行われておらず、地盤が緩んでいたことが分かった。自然災害が「人災」となることを防ぐにはどうしたら良いのか。

「報道の現場にいると批判をしがちだが、提案をしてみても良いのでは」と思い立ち、「木のストロー」の発案に至った。


アキュラホームグループ社長の宮沢俊哉氏。自らかんな削りを披露した。

竹田は「木のストロー」の実現化を考えていた中、かつての取材で知り合ったアキュラホームグループの存在を思い出した。アキュラホームは、注文住宅建設事業を行う企業で、木材を扱うプロである。社長の宮沢は自らカンナ削りを行い「カンナ社長」として知られる現場出身者でもある。日本の木材を熟知し、日本ならではの伝統の匠の技で建設を行うことに重きを置くこの会社なくして、「木のストロー」の実用化はなかっただろう。

開発過程では、「ただエコなだけでなく、ちゃんと人々に使ってもらえるストローを」と試行錯誤を繰り返した。使用する木の選定から、どのようにストロー状に形成するか、人体に影響のない糊の開発など、クリアすべき課題は多かった。国産の木材にこだわり、日本特産の代表的な樹種であるスギを選んだ。だが、特に難航したのは、どのようにストローを形づくるか、という課題だった。

最初は筒状に木をくり抜いたものだったという。竹田いわく「タピオカ用のストローのようだった」。太すぎて一般的なストローとしては機能しない。次に試したのは鉛筆のように形成する方法。左右対象の2つのパーツを組み合わせて作るのだが、木の性質上、時間の経過とともに歪んできてしまう。

最終的にたどり着いたのが、カンナで削ってスライス状にした木片を巻く方法だった。さらに巻き方にも工夫があり、らせん状に巻くことで飲み物と一緒に空気を吸い込むことがなく、飲み心地が良いことを発見したという。
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文=河村 優 写真=督あかり

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